本書を読むことで、仕事に向かうスタイルについて考えさせられる。アパレル業界の現状は以前に、『誰がアパレルを殺すのか』という書籍を通して知ることができた。トレンドとそこに乗り遅れないための早すぎる生産サイクルによって、業界全体が疲弊していた。しかしそのような業界の異様なスピード感とは別の立ち位置にいるのが“mina perhonen(ミナペルホネン)”というブランドだ。
同ブランドの設立者であり本書の著者である皆川 明の仕事は、ブランド購入者のライフスタイルに忠実だ。同時に、自身のライフスタイルにも忠実である。ものづくりの活動に“トレンド”という物差しは入っていない。そのブランドとそこから生まれる商品が生活者にとってどうあるべきかが、真摯に考えられていることが本書を通して伝わってくる。
繰り返すようだが、mina perhonenというブランドは時代の流れに飲まれることはない。しかしそれでもファンが増えていくのは、“らしさ”とそこに囚われない“冒険心”によってブランドの持つ価値がアップデートされているからだろう。顧客は服を身体に重ねると同じく、ブランドのあり方と自身の生き方を重ねているのではないだろうか。
“ブランドイメージ”ではなく“らしさ”、“チャレンジ精神”ではなく“冒険心”、立ち止まり自分のはどうあるべきか見直すことで仕事に対するスタイルは変わっていくのではないかと思わせてくれた一冊だ。