HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】心はどう生まれるのか?『単純な脳、複雑な「私」』

本書は海馬の研究を専門とする池谷氏が高校生への講義という形で脳の本質や意思とは何かということを考えていくものである。
私達は普段自分の意思で行動していると思っている。
実際にはそんなことは当たり前過ぎて、それを深く考えることもないだろう。
しかし、本書ではそれに疑問を投げかけるある有名な脳科学の実験を紹介している。
その実験はいたってシンプルで、被験者に好きな時に手を挙げてもらってその時の脳の状態を調べるというものだ。
その研究で明らかになったことは、被験者が手を挙げようと「意図」する約1秒前に脳はすでに手を動かす「準備」を始めているということだった。
つまり、普通私達は自分が手を挙げようと「意図」したから脳がその「準備」を始めると考えがちだが、実際には脳が先に「準備」を始めてそれから私達は手を動かしたくなるのである。
また、これと似た実験で脳の手を動かしたくなる部分に刺激を与えてその反応みるというものがある。
被験者はもちろん手を動かすのだが、その理由を聞くと自分で動かしたくなったからと答える。
実際には研究者が単にその動作を司っている脳の部分を刺激しているに過ぎないのに、本人はそれを自分の意思と感じているのである。
こうなってくると、本当に意思というものは存在するのか、もしかしたら脳が勝手に自分を操作してそう感じさせてるだけではないのかとも思えてくる。
この他にも、脳に存在するゆらぎを観察すると、プロゴルファーのショットが成功するかどうか予測できるというような実験も詳細されていて、脳の不思議さや凄さを十分に感じられる内容となっている。
AIがブームとなっている中、脳は効率よく進化するためにすでに存在する脳回路を使い回して新しい感情を作り上げてきたというような、システムの開発に似た面もある一方で、その時の脳のゆらぎでアウトプットが毎回変わるというシステムとは正反対の面もあり、そんな比較をしながらの読み方もできる一冊である。