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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】命の煌めきが輝き始める『花戦さ』

本書は野村萬斎氏主演、2017年に公開された映画『花戦さ』の原作本である。また、池坊家が花を生け始めてから、555年目となることが公開のきっかけとなった。

花の道に長年携わってきた身として、とても興味深い内容であったため、映画鑑賞後さらなる詳細を知るために本書を読み始めた。すると映画では語られていなかった多くのストーリーが隠されており、映画とはまた違った趣が感じられ、また一段と感動する場面が多々あった。

主要登場人物は、百姓の子に生まれ、信長に「猿」と呼ばれた「豊臣秀吉」、茶の湯の美を極め、武将をも弟子にした「千利休」そして、華道を発展させた花の名人「池坊専好」だ。「花と戦」一見相反するもののようだが、本ストーリーは、美を追求する芸術家と権力者の命がけの戦いである。

世は戦国の時代、場所は京都の「六角堂」当時、政治や文化の中心地であった京都は、人々も高い美意識を持っていた。その人々の心を惹き付けていたのが、六角堂に飾られていた「花」だった。

なぜなら自分の明日の命もわからないこの時代、懸命に生きる草花に人々は勇気づけられ、道端に咲く花にも命の大切さや希望を見出だしていたからだ。

本書の中でのポイントは、池坊専好の「花の道」千利休の「茶の湯の道」道は違えど、一つの道に打ち込む二人がお互いの道をさらに学ぶことにより親交を深めるところだ。自分の道を極め、美を表現することにより「生きる力」を人々に与える。そんな二人の関係性が見どころだ。

また、本書の醍醐味は、金に糸目をつけず、豪華絢爛なものに目がない「秀吉」と無駄をそぎおとすことにより、そこに本当に大切なものが見えてくる「侘び」を突き詰める「千利休」の対極性だ。

美しいのは、どちらなのか?

言葉や刀を使わずとも、相手の心を掴むことはできる。それが「花戦さ」なのだ。本書と併せて映像でのストーリーを鑑賞することにより、よりリアルに「美」の世界観を感じることができる作品である。

花戦さ (角川文庫)

花戦さ (角川文庫)