本作は、制作総指揮を務める西野亮廣氏により2011年頃より生み出されたストーリーである。初めは絵本として登場したのだが、その時からすでに映画化の構想があったそうだ。さらに、舞台や個展、美術館の建設、さらには、パリのエッフェル塔で日本人アーティストとして初めて絵本展を開催し、『えんとつ町のプペル』は次々と素晴らしい展開をしていった。
本作は単なるアニメーション映画ではない。緻密でドラマチックに描かれたえんとつで溢れた町のつくりや、数々の個性あふれる登場人物、細部までにこだわった映像美、どれをとってもかなりのクオリティの高さに驚かされるばかりだ。
また、映画では絵本には掲載されていない様々なストーリーが展開される。人々が住むその島は、なぜ星も見えないほど煙でいっぱいなのか。また、主人公は誰なのか。仮面を被り表情のない異端審問官に普通ではないと裁かれてしまう世の中。さらに、島の250年前の歴史、腐るお金「L」とは何なのか。ついに町の秘密が明らかになることにより、奥深いストーリーがより面白さを増す。
世の中は、本作の映画公開を待っていたかのように変化を遂げてしまった。ストーリーは、まるで現在を表現しているようだ。もちろんそれを想定してのことではなかっただろう。より深い黒い煙で覆われてしまった私たちが住む世界は、偶然なのかそれとも演出なのか不思議な世界は映画を観た後も私たちの世界で続く。そして、そのような世の中でも何かへ挑戦し懸命に生きる人々へのメッセージが本作には込められているのだ。