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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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『生涯投資家』著者 村上世彰

『生涯投資家』著者 村上世彰  (文春 e-book 2017/06/21)


世界は難しくなった。
なぜならば、お金の価値が落ちたからだ。
少し前までは、みんなたくさんお金を稼げれば幸せだと思っていたし、実際ある程度そうだった。

けれども今は、年収300万円を稼ぐことは全く難しくないし、年収300万円でも楽しく暮らせる。
なので、私は何に価値があるのかずっと考えていた。

本書を読むとそれがわかる。

脱線するが、常々私は良い本の条件は、2つあると思っている。
1.わかりやすく知識をインプットさせてくれ、自分の知らなかったことをわかりやすく教えてくれること
2.自分に対して考えるきっかけを与えてくれること
この2つだ。

本書は、冒頭にあるように、価値について考えさせてくれる、
さらに投資に関する原理原則をしっかり整理して教えてくれ、私の知らなかったことまで教えてくれる。

まずは、本書に記載がある投資の原理原則に関して紹介したい。

「株式会社は絶対的に株主のものである。資本と経営の分離は株式会社の置ける基本中の基本である。」

「上場企業は上場した故に、市場から資金と調達できるが、その分のオペレーションコストがかかることと、
いつでも買収されるリスクがある。」

コーポレートガバナンスをきかすことは経営の基本であり、
これが経営者としてできていないこと、これができていない上場企業はありえない。」
ROE等の財務指標を意識することはもちろんのこと、労務等(反例は電通)も意識することは当たり前である)
特に著者はコーポレートガバナンスを絶対真としている。

「日本は投資家と経営者のコミュニケーションが足りず、経営者として財務面での認識が甘い」
このことについてアメリカとの対比がされているのだが、以下の2つの表を見て感動してしまった。
(これが私が全く知らなかったこと)

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(本書より引用)


この2つの表は、総資産が大幅に伸びていること、それにも関わらず純資産が増えていないことを表している。
このことを換言すると、「AppleとMSは、リスクを取り資金調達を行い、しっかり回収し、それを適切な形で投資及び株主へ還元している。」わけだ。
資金を循環させながら企業価値を向上させていることがシンプルにわかり、両社とも企業経営として素晴らしいことがわかる。

次に、本書が与えてくれた洞察について書きたい。
価値についてだ。
著者は繰り返しコーポレートガバナンスの重要性について述べており、
上場を廃止するべき企業が日本にはあり、経営者も上場の理由を説明できない人が多いと批判している。
だが、財務状態が悪いからと言って、人をリストラしたり、一律で減給を行うのは良くないという。
これはかなり意外だった。何故ならば、私は投資家という人たちはPLとBSと事業計画しか見ていないのかと思っていたからだ。

世間一般的には著者のようにお金儲けのイメージが強い方(私はあまりそうとは思わないが)が価値が高いのは「人」だと言っているわけだ。
となるとだ、お金なんかより価値が高いのは「人」であり、最も価値が高いのはその人の「モチベーション」だと思うのだ。
総じて、面白い人ははっきりとしたモチベーションがあるし(著者の場合は、日本の会社のコーポレートガバナンスを是正すること)、
自分をそれをはっきりさせ、日々生活をしていきたいと思う。

投資についての原理原則を教えてくれ、全く知らなかったことを教えてくれ、「価値」についての洞察を与えてくれた本書は大変良い本です!

補足:
私の基本的なスタンスをはっきりさせておく。
・法律は絶対である。違法行為を行うのは犯罪であり、いくら現行の法規制が現状のシステムに追いついていなくても法律は絶対である。
(堀江さん、村上さんがなぜ捕まったのか私にはわからない)
・投資を行うことは絶対的に真であり、投資をすることは悪だと思っている人は頭が悪いと思っている。
・金融市場において、市場の透明性、効率性、流動性が重要であると思っている。
・お金儲けは、持続的に事業する上で当たり前のように必要なことであり、絶対的に真である。