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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】孤高のひとりIR!『楽天IR戦記「株を買ってもらえる会社」のつくり方』

話題には事欠かない楽天に関する書籍。最近の動向も注目されていますが、本書は少し時計の針を巻き戻して、2005年から約10年間、楽天が事業の多角化を進め、楽天経済圏構想が生まれた時代のお話です。著者は当時のIR担当者で、現在はマーケットリバーという会社を経営されている市川 祐子さんです。彼女は業界では言わずと知れた有名人で、IR担当者の憧れと言っても過言ではないIRのスペシャリスト。本書は企業のIRとは、またその心構えを知るのにうってつけの一冊となっています。

本書はストーリー仕立てで、市川さんが楽天初のIR選任担当として業務を開始してから、様々な案件をこなしていく中で、IRに関連する多様な仕事に関わり、その本質に触れていく構成となっています。TBSへの統合提案を皮切りに、1000億円規模の公募増資、イーバンク買収による金融事業の強化、未曾有の危機となった東日本大震災を乗り越え、楽天イーグルスが日本一に、そして東証一部へ上場と、絵に描いたような同社のサクセス・ストーリーの裏側が泥臭く語られます。

「1分で何点か指示がでるから」と無茶振り的に投資家向けのプレゼン直前に資料修正の指示があったり、一方では、楽天市場の出店店舗のセミナーで、生卵をECで売る事に挑戦し、同社のミッションであるエンパワーメントを体現したパートナーについてうれしそうに話したりする三木谷さんの側面が垣間見えるのも興味深いです。

IRと言えば、開示資料を作る部署、株主から電話があったら対応する部署ぐらいに思っていたのですが、本書で説明されているように、社長やCFOと複雑な財務の議論をしたり、会社の良さをストーリーを持って株主に提案したり、上場など会社の社会的地位を築き上げたり、実に多岐に渡る非常に付加価値の高い業務だと知ることができました。またひとりIRとして一担当者から、部署の統括、そしてその道のスペシャリストとして独立、というキャリアの進め方の観点でもお手本になる一冊でした。