『約600万人』。これは、現在の食人人口。つまり現在、この地球上で「習慣的に人を食している人間」の人口である。
しかも、その食人人口は現在、増加傾向にある。慣習、狂気、犯罪、食料、儀式。様々な観点から、
食人すなわちカニバリズムについて、まとめたものが本書である。
食人は、近親相姦、親殺しと並んで人類の三大タブーと考えられている。それは、社会的、道徳的、宗教的な掟を犯し、
人間を野蛮な獣に落とし込み、人間を文化の外へ追いやるものであるからだ。
しかし、歴史を見ると、人類誕生と同時に食人文化は生まれ、それは現代まで途切れたことがない。
また、面白いことに文化的、商業的、産業的な民族ほど、人食いを行っていることが多いことがわかっている。
簡単に言うと、果実を食べていた人間が、動物を食べ、人を食べる。そのとき初めて、宗教が生まれる。
宗教の誕生により、食人の習慣がコントロールされ始める。食人の存在が宗教を生み、文化を生むというわけだ。
文化の発展には食人文化は欠かせないものというのが、国際会議の結論である。
さて、本書の帯には『女のほうが柔らかい。』、『男のほうが、味がいい。』
と書いているが、食人民族へのインタビュー結果に基づく味の違いや、調理方法について紹介しておこう。
各民族への調査結果、最もおいしいのは、黒人。次が黄色人種。塩辛いのが白人だという。
調理方法は、焼く、煮る、蒸す、燻製と多岐にわたり、部位ごとにおいしい調理方法は各民族で研究されつくされているようだ。
ところで、『マルタンモンスティエ(著)、大塚宏(訳)』この二人の組み合わせでの本は非常に多く出ており、
タイトルだけ見ても『自殺全書』、『死刑全書』、『ハエ全書』、『乳房全書』、『毛全書』、『決闘全書』等
非常に知的好奇心をくすぐられるものばかりだ。
いつも思うが、本は本当に日常生活では体験しづらいことを非常に安く学べ、本当に面白い。
現在の地球では深刻な人口増加問題が生じている。発展途上国では人が増え、食料危機に陥っている。
世界の人類学者の研究では、今後半世紀のうちに食料問題により、『食人問題』はさらに大きくなっていくらしい。
食人問題に目を背けずに、今から考えておくためにも本書はおすすめである。
- 作者: マルタンモネスティエ,Martin Monestier,大塚宏子
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 単行本
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