神話は信者からすれば科学的事実を超えた信仰的事実である。現実を生きる上で世界を見渡す時に、ある意味をつけることがあるだろう。人間の脳は何の意味もない点が3つもあれば顔を見出す。雨の日には憂鬱になる人もいるかもしれない。なんら意味のない水蒸気が空から消えて、太陽が顔を出しただけで心が晴れ渡るのなら、それは健全なことではないか。
まず物語として面白い。何しろ人類最初の物語、元祖コンテンツだ。漫画などの現代作品のモチーフとして登場することも多いので、その原典に触れるという楽しみのために、世界中の多くの神話の要約や概要がまとめられている本書は便利である。
文字が誕生する以前から、内容を変えながら口伝えで引き継がれ、文字として刻もうとした熱意によって現在まで残され、時代に合わせて解釈を変えてきた。人類史とともに伝えられてきたのは、聖なる書物で宗教という組織に支えられてきたから、だけではない。生きる知恵を後世に残そうした先人たちの意志によるところが大きい。
世界の数多ある神話を知ることによって、人類が世界を見渡したときに、何を考えたか、どう行動するべきかを見つけることも面白いだろう。人間関係から環境問題、あらゆるテーマを見つけることができる。お気に入りのヒーローを見つけてみてはどうだろうか。
名前は知ってるが内容は知らないものが多いと思う。神話の要約集として、鑑賞の助けとして、机辺におすすめする。
『世界の神話101』
作者: 吉田敦彦
発売日:2000年6月5日
メディア:新書館