HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】社会は僕らの思い通りにならない?『経営リーダーのための社会システム論』

話題に事欠かない稀代の社会学者である宮台 真司氏と、全人格リーダーシップ教育をミッションとしたユニークなビジネススクール至善館のファウンダーである野田 智義氏が、講義録形式でお届けする社会学の教科書。

私たちが社会という荒野を生きる中で感じる違和感や不安を、データや歴史的な事例に基づいて巧みに言語化し、学生との対話を通じて、読者にも問いを投げかける内容となっている。

誰も悪くないのに、いつの間にか罠に嵌って抜けだせない。便利な世の中になったのに、孤独で寂しくて仕方がない。周りにいるはずのたくさんの人たちは風景に過ぎないのに、極めて狭い人間関係の中でもがいている。何も失うものがない、いわゆる無敵の人が誕生してしまっている。何をやっても満たされず、入れ替え可能という恐怖に苛まれる。

一見クズで頓馬に成り下がった現代社会とそこでシステム化された社会の便益をつまみ食いしようとする現代人という病理を残酷なまでに浮き彫りにする一冊だが、最終章は宮台真司氏の「ミメーシスを起こす人間たれ」という次世代のリーダーに向けての願いが語られている。良い社会とは何か。どうやったら善意と主体性を基礎に置く統治が実現できるのか。本書にその答えはないが、本書を読むことで、考えるスタート地点には立つことができるだろう。

そう、僕らは社会なしに生きていけない。絶望の中に希望を見出し、力強く生きていくためのヒントを感じ取って頂きたい。