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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】理想と現実、ビジネスとスロー、経済と幸福『ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済』

経済的成功が唯一の成功ではない。理想と現実を両立させる仕事のやり方が記されている。

著者:影山知明
マッキンゼーからベンチャーキャピタル創業を経て、シェアハウスとコーヒーショップをオープンさせ、食べログのカフェ部門で全国No1を獲得した異色の経歴を持つ。この著書では、どのような思想・思いでコーヒーショップを営み、お客様や従業員、仕入れ先など身近な関係性に向き合うかを、様々なエピソードとともに綴っている。
すべてのエピソードは、理論ではなく著者と仲間たちが実践し、その結果を受け止め、内省し、言語化した体験に基づくものである。そのため、成功や失敗に関するリアルな洞察が信頼でき、説得力を持って伝えられている。
本書の構成
1章 一キロ3000円のクルミの向こうにある暮らしを守る方法
2章 テイクから入るか、ギブから入るか。それが問題だ
3章 お金だけでない大事なものを大事にする仕組み
4章 交換の原則を変える
5章 人を「支援」する組織づくり
6章 「私」が「私たち」になる
7章 「時間」は敵か、それとも味方か

「まえがき」から引っ掛かった箇所を一部引用する。
~引用ここから~
経済とは元々、中国の古典に登場する言葉で「経世済民(=世をおさめ、民をすくう)」の意であるとされる。
(中略)
それがいつからか「ビジネス」という言葉に置き換えられていった。
ビジネスの由来は、bising+ness。bisingは古い英語で、ここから派生した形容詞がbusyだから、「忙しさ」をその語源に持つことになる。
時間をかけず、労力をかけず、コストをかけず、できるだけ効率よく商品・サービスを生産し、お金を稼ぐ。
「経済」は、「ビジネス」という語を経由して、気が付けば「お金儲け」の意で使われるようにさえなってきた。
~引用ここまで~
の箇所は、普段意識せずに何気なく使っている言葉の裏側に、実はそのような意味が込められていたのかと驚きだった。
それにしても漢字といい、英語といい、言語を考えた人は天才だなとつくづく思う。

2章「テイクから入るか、ギブから入るか、それが問題だ」
ビジネスでは通常すぐに成果を出す(テイクする)ことを求められる。
しかし、著者はすぐにテイクしようと考えない。時間軸を長くとって、ギブを続ける、等価になると相殺されて関係性が終わってしまうから、あえて不等価な交換にする。それがギブの動機になる。
親が子供を育てる時はまさにこの感覚に近いのではないだろうか。子供には別に何も見返りも求めず、とにかくただひたすらギブする。もしかしたら、将来ギブされるかも。知らんけど。
そういえば、HIUに入った際にも同じことを言われたなと思い返しました。

こんな人におススメ
・今の仕事にしっくり来ていなくて、モヤモヤしている人
・人を手段化するビジネスにうんざりしている人
・お金だけでない大事なものを探している人

この本を読んでいて、サンテクジュペリの星の王子さまの有名なフレーズ「本当に大切なものは目に見えない」を思い出しました。

一つ一つのエピソードにほっこりし、勇気と希望をもらいました。
自分も身近な人を大切にし、人を手段化しない働き方、生き方がしたいなと改めて思いました。
「人が幸福感をもって日々生きる。そのために経済がある。」
そういう世の中だであってほしいなと。
この本を読んで、このコーヒーショップに興味が沸き、
たまたま自宅からそれほど遠くないところであることがわかったので、ぜひ一度訪れてみようと思う。

発行:大和書房