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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】歴史の舞台裏から学ぶ大東亜戦争シリーズ6→実際はどうなの?『おじいちゃん日本のことを教えて』

 8月は広島と長崎に原爆が落とされたり、終戦記念日であったりと大東亜戦争(第二次世界大戦)の話が良く出るので、そういった本を個人的に選んでおります。今回はアサヒビール元副社長の中條高徳氏の孫娘が1人で渡米しアメリカの圧倒的な影響を受けて、日本人の心を見失ってしまうのではないかという思いを祖父(中條高徳氏)に手紙を送ります。中條高徳氏が戦時中、日本や大東亜戦争について体験した、感じた話を例に孫娘に答えていきます。当時の様子を伺え、日本人とは何かについて参考にもなり、対話形式でわかりやすく、読みやすい一冊です。

中條高徳氏は昭和2年に長野県生まれ、陸軍士官学校(60期生)を経て学習院大学を卒業します。その後、アサヒビールに入社し、57年「アサヒスーパードライ作戦」を展開し大成功を収め、63年に同社代表取締役副社長に就任されます。中條氏が陸軍士官学校に入学した時の様子はこのように書かれています。

【郷里を出るときは、家門の誉れ、郷土の誇りと讃えられ、日の丸の旗の波に見送られた。厳しさを加える大東亜戦争 (昭和十二年に始まった支那事変を含めて今次の戦争を日本政府は昭和十六年に大東亜戦争命名した)の戦況に、日本を守るためにこの体を捧げるのだと私は胸を熱くしていた。】

この中條氏の言葉を見る限り、日本のために尽くそうとしていたことがよくわかりました。こういった熱い思いが自分には乏しいのかなと感じます。しかし、敗戦なると日本の雰囲気はガラッと変わります。

 【戦争に負けたこともさりながら、私にとっての何よりのショックは、価値基準の百八十度の転換であった。昨日是であったものが、敗戦を境に今日は根こそぎ否定される。一点の疑いも持たずに立っていた自分の基盤が音を立てて崩れ、茫然自失となるほかはなかった。周りのすべてを拒否し、自分の中に引き籠もることで、私はようやく自分を支えた。そこから自分を再構築して新しく出発していくためには、死ぬほどの苦しみを味わわなければならなかった。】

 企業の価値観が合わなければ転職すればいいだけの話ですが、国の価値観が変わり自分の価値観が強制的に変えられる気持ちなんて想像できないです。ただ、もし自分がそういう目にあったとき、苦しみながらも再構築する方法が本書にはあると思います。
 それでは、中條氏は日本についてどう思っていたのでしょうか。本書からの引用です。

 【だれもがそれぞれの国や民族の歴史、文化、伝統を背負って存在している。それが人間という存在の現実なのだ。普遍的抽 象的な人間を抽出し、人間とは何か、人間はいかにあるべきか、人間はいかにあらねばならないかを論理づけるのは重要なことだ。】
【日本のように一つの民族が一つの国に収まっているのは世界でも珍しいことで、多くはそうではない。
いくつもの民族を抱え込んでいる国がある。一つの民族が国境線で仕切られ、異なる国に属しているところもある。】
【そこで政治的思惑や経済的利害がからまり、民族の問題をさらに複雑にしているのだ。その民族の坩堝(種々のものが入り乱れるたとえ)のような、世界の縮図とも言えるマスターズ・スクールに学んだ景子は実にいい経験をしたものだ。】

 この文章を読んで、日本の歴史、文化、伝統とは何だろう?と思い日本について勉強をし始めたのを覚えています。海に囲まれた日本、地政学的にも近代では恵まれていたのではないでしょうか。

自分で歴史を学び直し、後世に伝えていくのは重要だなと感じました。その一助にもなる一冊です。

発行  2001/6/29
著者  中條 高徳
出版社 致知出版社