「つくづく、人間の運命ほどわからぬものはない」、飛行機乗りで大東亜戦争(第二次世界大戦)を戦い、生き抜いた著者の坂井三郎氏の言葉が印象的でした。アジア解放をかかげた大東亜戦争中、他国と渡り会う戦力となったのが世界最強の戦闘機「零戦」であり、そのエースパイロットの一人が坂井三郎氏です。彼は200回以上の空中戦を戦い、64機の敵機を撃墜して、世界的なエースとなりました。この本では、坂井氏が日本の栄光を信じて、散っていった多くの戦友たちとともに、青春時代に大空で戦い闘った迫真の記録として描かれています。「生きる」「命をかける」とはどのようなことか、見ていきたいと思います。
本書を開くと目次の後に、日本やオーストラリアなどを含めた太平洋諸島の地図があり、その戦闘領域の広さがわかります。この地図を元に本書を読み進めると、索敵しながらの移動距離と時間などからパイロットの凄さが伺えます。次に、昭和13年10月5日の初陣から昭和20年8月17日の東京湾迎撃まで、坂井三郎氏の出撃記録があり、その数に圧倒されます。しかも、載っている記録以外にも出撃があるのです。
当時、飛行機乗りは平時でさえ、命の危険性がありましたが、増して戦争とのなると、その危険性は数十倍とみられていました。本書の冒頭で坂井氏がガダルカナル島で敵の八機編隊に突っ込み、大きな負傷を負い、意識朦朧としていく姿が書かれています。そして、生還。しかし、戦争の中で多くの日本の平和のために多くの戦友を失っていくことが書かれております。それを乗り越える精神、この頃はまだ明治維新の気迫があったように思えます。
二十歳前後の若者が命を捧げて守ってくれた日本。今の環境は彼らの賜物だと感ぜざるを得ません。今の自分が生きている有難さを実感せざるを得ない一冊です。
(本書は上下巻からなっており、本評は下巻も若干含まれているのでご容赦下さい)
発行 2001/4/19
著者 坂井 三郎
出版社 講談社