皆さんは、何かを買うとき、何を基準にして買うだろうか?どのような意思決定プロセスのもと、物を買うのだろう?僕は疑問に思っていた。それに、皆さんにはこのような疑問も投げかけたい。何故、「ポイントセール」などやるのだろう?「ポイントをつきますよ」と宣伝するくらいなら、単純に値下げをして売ればよいのに。しかし、本書を読むと、企業が、如何に皆さんに買わせようと思わせているのかが見えてくる。そして、何故詐欺で多くの人が騙されるのかも、この本を読めば、容易に把握できる。まさに、人間心理の法則書、といってもいいくらいの本だ。そして、何より、この本は僕の好奇心をかなり刺激した本でもある。しっかり科学的に書かれており、信憑性も高い。自己啓発本や下手なビジネス書を読むより、この本一冊で事足りるくらいだ。では、どこが面白いのだろう。今回はそれを書いていく。僕の好奇心が爆発した本でもあるからだ。
まず、この本では、6つの心理傾向が解説されている。が、その6つに共通する心理が解説されている。この前提を最初に把握すれば、人間がいかに、単純な部分を持っているかがよくわかる。人間は、多くの場合において、自動的反応をしている。つまり、何かトリガーがあると、何も考えずに自動的に行動するのだ。まずこれが面白い。人間を動物としてみると、如何に人間が数万年前の原始時代の脳のまま生活しているかがよくわかる。そして、この自動反応を著者は「カチッ・サー反応」なんて名前も付けている。なんと単純明快で分かりやすい言葉だろうと僕は思った。更に著者は本書の中で「自動操縦」とも言っている。実にユーモアと皮肉が効いている。このように、楽しみながら学べる本なのだ。
また、この本をもとにしてスーパーのポイントセールを分析してみると、面白いことが分かる。このポイントセール、毎日やっているわけではないことに注目してほしい。週1日などのペースで実施しているだろう。もうすでに、この設定が「罠」なのだ。これは「希少性」という概念を使っている。人間はわずかなものに価値を感じるようにできていて、たとえそれが欲しくないものでも、価値を感じるようにできているのだ。つまり、「今日限定ですよ」というメッセージを込めることで、客の購買意欲を煽っているのだ。多くの人がこれに気付いていない。これは僕の推測だが、狩猟採集民時代は、如何に食べ物を多く持っているかが生き残るうえで欠かせなかった。ということは、者が少ないときに価値を感じるのもある種当然のことといえよう。なので、売る側は、この希少性を使って、僕たちの財布のひもを緩ませるのだ。このことを知ったとき、僕は身震いした。
本書を書いたのは、ロバート・チャルディーニという元アリゾナ州立大学の先生である。現在は会社を立ち上げ、講演を行っている。この本は1984年に発売されたが、今なお絶大な人気を誇っている。メンタリストDaiGoさんも読んだ本だ。本書は、実に300万部以上も売れた、大ベストセラーの本だ。
本書は、人間の心理という見えない領域を扱っている。ここには書ききれない、もっと面白いことが山ほどある、まさに宝物だ。ぜひ、読んでみてほしい。
参考文献
ロバート・B・チャルディーニ(2014~2022)『影響力の武器[第三版]―なぜ人は動かされるのか―』社会行動研究会(訳) 誠信書房