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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】悪い血脈。『バッドブラッド』

カモの人選と絵図を描く元締めの老婦人、荒っぽい役割担当、態度のデカイ脂の乗った中年男、美貌をフルに利用し、ベッドで男を狂わす女、そして若いながらも実行チームを引っ張る男。
これら悪党四人組が主人公たちのクライムストーリーの漫画である。

輸入商社系と思われる大会社の経営者の下に一本の電話が鳴った。
電話の相手は、或る買い物を吹っ掛けてきた。その代金は一億円。
あの夜・・・・・不意に舞い込んできた美女。コカインとLSDと漢方媚薬をブレンドした液体を染み込ませた黒い蝶のシールの効用で、ベッドの上であの女に溺れた・・・・・あの一夜。
「振り向け!」
電話の男の言うままに目を向けた窓の外。そこにはヘリコプターが。そしてそのコクピットにはあの時の女が!
嘘を突くハッタリ演出。それによる麻薬のフラッシュバック! 考えるヒマを与えぬ手際・・・・・電話の男は経営者から選択肢を奪った。
「たとえあんたが何回生まれ変わっても、もう一度あのセックスの権化のような女と会えるだろうか。あの夜を・・・・」
30分後、電話の相手は経営者の会社に訪問してきた。図太いやり口の割には意外なほど若い男。彼は一億円を手にした。
買ったのは、一本の電話番号。
女を想い描いて夢中で電話を架けるも、それは全くのでたらめの番号だったのだった。
「原価はヘリコプターのチャーター料金だけか。ボロイぜ」
中年の男は言った。
「誰も俺たち四人を本当の家族とは思うまい」
彼らは実の家族。母親、息子、その娘、息子なのだった。
荒稼ぎの目的は・・・・・スリランカへの永住計画。

原作は狩撫麻礼、作画が松森正。この二人が組んだだけで既に魅力的だ。期待十分で読み進めれば、異様なこの四人の家族が求める、かつて奪われた或る夢への回帰の望みが浮かび上がってくる。
「金が要る。何億も。幸いに手を抜いて育てたわけでもねえのに、息子は申しぶんのない不良息子、娘は色情狂だ」
「夢を実現するただひとつの戦い方・・・」
「そして世間の常識やモラルを棄てたのさ・・・」
その夢とは? 今でも祝祭に溢れ、純朴な人々の住むインド洋の島国スリランカで、彼ら彼女らが興そうとしているものとは何?

やがて、荒稼ぎしているわけのわからない四人組を放ってはおけないと、黒社会の連中の手が彼らに忍び寄ってくるのだった。
悪い血脈で結ばれた家族四人は、目的を果たせるのか?

バッドブラッド
作者: 狩撫麻礼松森正
発売日:1983年6月1日
メディア:単行本