第二次世界大戦の独ソ戦を舞台にした小説で、ソ連に実在した女性だけのスナイパー部隊を描いている。ミステリー小説の新人賞であるアガサ・クリスティー賞において、初めて選考委員全員が満点をつけた大賞受賞作である。
ある日突然、故郷をドイツ軍に襲われた主人公。目の前で村が焼かれ、家族が惨殺される。自らも射殺されそうになったが、間一髪でソ連兵に助けられる。生きる希望を亡くした主人公ではあったが、復讐を誓って狙撃兵になることを決意し、物語は始まっていく。
主人公が過酷な戦争の最前線を駆け抜けていく中で、極限状態に置かれた人間の緊張、怒り、悲しみ、愛が丁寧に描かれている。戦闘シーンの緊迫感は本当にリアルで、こちらも緊張しながら読み進めることになってしまった。
本作を通して、戦争の前線で戦っているのは「人」であることを再認識した。一般の人でも、戦闘員になれば戦争を境に人殺しとなってしまう。訓練の中で、敵への怒りや憎しみを半ば強制的に植え付け、自分の中で敵を殺すことを正当化させるものの、人を殺したという事実は変わることはなく、戦争が終わった後もその事実を抱えながら生きていかなければならない。戦争は被害者だけでなく、戦闘員の一生をも狂わせるものであることがよく分かった。
今までは、ニュースを通して被害者のことばかり気にしており、戦闘員目線で戦争を考えたことはなかった。本当に今読んでよかった作品だった。
