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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】むっちゃリアルな上にクソ真面目なことこの上ないロボットアニメ。『ガサラキ』

 

ガサラキおじさんという人種がいるらしい。
この書評を書くに当たって、改めてWeb検索した際に知ったことだ。
どうやら、SNS界隈でリアルロボット路線の話になると、「ガサラキはいいぞ」と言い出すのがその習わしらしい。
その『ガサラキ』とは、1998年10月4日から1999年3月28日まで全25話に亘って放送されたTVアニメ作品であり、原案、監督は高橋良輔。そう、『太陽の牙ダグラム』、『装甲騎兵ボトムズ』の高橋監督が、『蒼き流星SPTレイズナー』から13年振りに監督を務めた作品である。

本作品で登場するロボットは、タクティカルアーマー(TA)という体高約4mの二足歩行型兵器である。
装甲騎兵ボトムズ』に於けるアーマードトルーパー(AT)と同様のサイズであるが、その描かれ方は全く異なる。
汎用性の高いATに対し、TAは主に都市部での局所戦による使用を前提としている。航空機、戦闘ヘリや戦車と正面切って戦うのは無謀であり、暴徒の鎮圧などの限定された状況に於いて有効と考えられている。
手は有っても、まさにマニピュレーター然として扱われており、敵を殴りつけたりすると、強度不足でぐちゃぐちゃに粉砕してしまうのもリアルくさくて面白い。
最大の特徴は、後方支援の指揮車両との連携であろう。指揮車両は作戦中にはTAパイロットを絶えず監視及びバックアップしており、周囲の状況を把握し、作戦行動を指示したり、パイロットのフィジカルチェックも常に行なっている。
作中では、移動時の振動や対敵時のストレスによって、パイロットに身体や精神に過度な負担がかかることが強調して描写されているが、そんな時には指揮車両の判断で、勝手になにやらプチュっと注射をされてしまうところがなんとも恐ろしい。
なお、本作の時点ではTAは試作機段階である。

なんとも地味で不自由そうなTAであるが、ミリタリー色全開の運用の様、この辺りが、ガサラキおじさんたちに「いいぞ」と言わせる所以なのだろうか。
それとも、作中で描かれる政治経済劇か、日本対アメリカの攻防か、極右思想家&一部の自衛隊によるクーデター騒乱か。
まぁ、とにかくハードな作風なのである。全くお気楽さが無い。
そこにさらに、能といった伝統芸能やら、千年の記憶やら、鬼やらの伝奇物ホラーな要素まで盛り込んでいる。
加えて、前世から繋がる恋の道行きなんてものまで展開されるのだ。
と、ここまでを読んでも、中身が全然分かんないでしょ。
理解するには、観てみるか、読んでみるしかない。

高橋監督のファンである私は、当然、放送当時に視聴していた。
正直言って、その評価は微妙。残念ながら。
なんというか、常に寸止めを食らわされるとでも言おうか。もう一歩踏み込んでくれよというとこでブツっとされて、どうにものめり込めなかったのである。
そして、特に後半では主人公が殆ど活躍しないことにもジレンマが生じる。
その要因の多くは、シリーズ構成、脚本を担当した野崎透によるものであろうと思う。
しかし作品に関する最終的な責任は監督に在る。
その高橋監督は、マイナスに働いた面を自分が修正すべきだったと述べており、また、ロボットを活躍させなさすぎたことで、そもそものロボット物の存在意義として大前提とされる玩具のセールスが奮わなかったことにも反省の弁を語っている。

ものすごく尖っていて観るものを選ぶ。面白くないかといえばそこまででもない。なんか惜しい作品である。
でもたまに観たくなるのがまた妙なのだ。
そんな感じで、20年以上経っても未だにたまに話題に挙がる、不思議な魅力を持ったアニメ作品のノベライズの本書。
放送終了後、全四巻が発刊された。

ガサラキ
作者:野崎透
発売日:1999年4月1日
メディア:文庫本