ある程度の年代の方であれば話の内容は思い出せないけど一度は聞いたことのあるタイトル『ボッコちゃん』。ショートショートの巨匠、星 新一の代表作であり、小学校の頃には一度は読んだことのある作品ではないだろうか?
大人になり改めて読んでみると『ボッコちゃん』の文字数はわずか1,984字、原稿用紙5枚ととても短い。にも拘らず文章ひとつひとつに張り巡らされた伏線は、オチに向けてドキドキ感とワクワク感が入り混じり、そして伏線を回収するだけでなく想像を裏切るなんとも残酷な結果となるのである。
星 新一のショートショートはうむむ・・・と唸らせ、まるで落語のような「おーそうきたか!」というオチが秀逸で、大半が残酷な最後を迎えるが、不思議と悪い後味とならないのは、主人公をはじめ登場人物にあまり感情がないからではないかと感じた。気軽に読めるエンターテイメントなのである。
『ボッコちゃん』だけでなく、星 新一の作品は時代に合わせて表現を改訂していっているようだ。「ダイヤルを回す」を「電話をする」など地道な活動があったから、今も新しさを感じる一冊である。地下鉄一駅で一話読めるので、隙間時間つぶしにオススメである。