「ぴえん」という言葉をご存知だろうか?2019年頃から若者の間で流行しており、残念なときや嬉しいときの心情を表す汎用性の高い表現として広まっていった。この多様な意味を持つ「ぴえん」は、次第に行動様式の意味を持ち始める。ぴえん系女子である。
原宿系の個性的ファッションスタイルのひとつに「病み系」が存在する。近年、これが派生してぴえん系というのが誕生したようだ。ピンクの涙袋でうるうるした表情となるメイクをし、ゆるふわでお人形的スタイルの服を身にまとう。ポーチやリュックにぬいぐるみを付けているのも特徴だ。
本作品では、こんなぴえん系女子の心情に切り込んでいる。一部のぴえん系女子の間では、メンヘラもファッションのひとつであり、自分の病み具合を誇示するように、リストカットや市販薬の大量摂取などの自傷行為を行う者もいる。「推し」と呼ぶ存在のためなら死ねる=かわいい、が彼女らの中のカルチャーである。
「推される側」の男たちとそこに金銭を投じる彼女たちの実情や、SNSの評価やフォロワー数に自分の価値を委ねている姿がマジマジと描かれていて、ときに胸が痛くなる。そんなに周りの評価を気にしなくてもいいのではと思うのだが、それが彼女たちの普通なのだ。
ネットで誰とでも繋がれる現代は、他人と比較して自分を過小評価してしまいがち。自分の価値を確かめるために、お金を使ってでも誰かに必要とされていることを実感したい。そんな時代なのだ。マジぴえん。