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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】メイプルスには期待せざるを得ない 『メイプル戦記』

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1992年、プロ野球セントラル・リーグに女性選手だけのプロ野球球団「スイート・メイプルス」が参戦した。他球団は男性選手ばかりで勝負にならないと思われていたが、野生の勘が冴える広岡真理子監督、心は女性である甲子園優勝投手の神尾、多彩な変化球だけでなく魔球をも投げる芹沢桜子、スラッガーエドワーズなどの活躍もあり、シーズン中の浮き沈みはあるものの優勝争いを繰り広げていく。野球漫画としての面白さだけでなく、それぞれの選手の人間模様も描かれている。少し変わった設定の野球漫画を読みたい人にオススメ。

本作は1991年~1995年にかけて少女漫画雑誌である『花とゆめ』に連載された。「スイート・メイプルス」の本拠地は札幌であり、ドーム球場である。連載時には現在の札幌ドームはできていないし、日本ハムの本拠地も北海道ではなかったので作者は予言者ともいえるかもしれない。本作は新球団創設のジャンルとしても読める。女性だけの球団がセントラル・リーグに参戦ということで、一般的な新球団創設のストーリーではないかもしれないが新球団創設にあたっての、地域やファンの徐々に高まっていく期待といったものも感じられる。

「心は女性の甲子園優勝投手を除くと、女性しかいないチームなのにセントラル・リーグで優勝争いだって!?さすがに漫画すぎる!」
と思われたそこのあなた!確かにそうかもしれない。でも当時、野球少年だった評者は自分が大人になる頃にはこういった球団も参戦してくるのではないかと割と本気で思っていた。というのも速球や長打力はなかなか難しいとしても、例えば芹沢桜子のような魔球を含む多彩な変化球とコントロールの良さが備わっているような技巧派であればセントラル・リーグでも十分通用するのではないかと。現在の日本女子プロ野球リーグのレベルはそこまでは達していないかと思うが、「こんな選手がいたらそういうことも実現するかもしれないな。」と夢を見ることができる。

作者の川原泉氏は1983年にデビューし、多くの作品を世に出している。2006年には『笑う大天使』が実写映画として公開された。本作『メイプル戦記』は、豆の木高校で野球部の監督となった広岡真理子が甲子園を目指した『甲子園の空に笑え!』の続編にあたる。

最後に、本作のオススメポイントをもう1つ。1990年代前半の作品であるため、その時代のプロ野球選手や球団を連想させるような描写が多く出てくる。その時代を知っている人には懐かしく感じ、ニヤリとするだろう。

 

メイプル戦記 1 (白泉社文庫)

メイプル戦記 1 (白泉社文庫)