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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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メイド・イン・イタリーのプライド 『オロビアンコの奇跡~職人技とハイテクの融合が新市場を創る~』

衰退していた日本のバッグ業界に、革命を起こし、現在も成長を続けているイタリアのバッグ製造業「オロビアンコ」は、なぜこれほどまでに成功したのだろうか。

まず、オロビアンコの顔でもあるジャコモ・マリオ・ヴァレンティーニ氏は、創業者であり、オーナー経営者でもあり、またデザイナーでもあり、伝統技術継承の啓蒙家でもある。そんなジャコモ氏の経営哲学は、かなり独創的だ。

初めてオロビアンコと出会った際、購入の前にどのようなブランドなのか、どのような商品を取り扱っているのかと、オロビアンコジャパンを探したが、存在しない。おそらく、多くのオロビアンコファンも同じ道をたどったことだろう。

オロビアンコ社は、日本国内に代理店もジャパン社もなく、小売店との直接取引を行っている。そのため、他の海外ブランドのように商社や卸の中間マージン等が価格に反映されることなく、同レベルの商品よりも安く販売価格が設定されている。

さらに、1万2000点のバッグモデルがデータ化されているため、選んだモデルに対し、カラーディテール、金具、裏地まで様々な組み合わせができ、商品のバリエーションが豊富である。そのため、それぞれの小売店からの小ロットの別注対応が可能だ。百貨店やセレクトショップ、スーツチェーンなどの3000店を超える扱い先があるが、それぞれのオリジナルバッグが実現し、販売されている。

実際に、各店舗で商品を確認すると、なかなか楽しい。このバッグには、この裏地と意外な色や柄の組み合わせがあったり、バッグを開けるごとに、ワクワクする瞬間がある。消費者からすれば、同じオロビアンコでも、多くの種類の中からお気に入りの商品を選択でき、在庫も少なく、いわばすべてが限定商品である。さらに低価格のため、気に入れば買わずにはいられない。買わなければ、次回同じものに出会える可能性は低く、希少価値のあるものになっていく。そういった戦略が消費者の心を掴んでいるのだろう。

職人ならではの「物づくり」へのこだわりも凄い。イタリアの企業の中でも特異で、100%メイド・イン・イタリーにこだわっている。さらに、日本には無い独特の「味」がある。日本人の気質としてキッチリとし過ぎた生真面目な完成度により、「こうでなければ、ならない」という常識感からか、商品としては完璧でも面白味にかける。その点イタリア人の気質なのか、顧客が気にしない細かい部分にまでこだわり、作り手の様々な遊び心が商品に「味」をだしている。それが付加価値となり、購買につながるのだろう。そんな職人魂が、消費者の心をくすぐり、多くのオロビアンコファンを作っていったのだろう。

本書は、オロビアンコの成功の秘密とまさに「オロビアンコ」=「貴重なるもの」が学べる一冊である。

オロビアンコの奇跡―職人技とハイテクの融合が新市場を創る

オロビアンコの奇跡―職人技とハイテクの融合が新市場を創る