読書はそれなりにしている。読書で知識も得た。それなのに読書をうまく仕事に活かせてない。そう感じる人は多いのではないだろうか。本書は、そのような人のために、読書を仕事につなげる技術について書かれた本だ。
著者は、コンサルティング業界で活躍する山口周氏で、著者自身はビジネススクールで体系的に経営学を学んだことはなく、大学の学部及び大学院で学んだのは美術史という、ビジネスから遠いキャリアを歩んできている。そのような経歴ながら、その後10年以上もコンサルティング業界で仕事をしてこられたのは、読書を通じた学習のおかげだと著者は言っている。
ところで、私もそうなのだが、それなりに読書をしているのに、いまひとつ仕事につなげられないのは、何が問題なのだろうか。それを著者は、”読む量”ではなく、”読んだ後”に問題があると言っている。
では、読書をした後は、どうすれば良いのか。本書から少し紹介しよう。
本書では、読んでいる本がビジネス書かリベラルアーツかによって、読書の仕方を変えることが必要だとしている。そして、リベラルアーツの読書に関しては、“知識の抽象化”が大切であり、その例として次のようなものを挙げている。
抽象化前:アリ塚には一定程度遊んでいるアリがいないと、緊急事態に対応できずに全滅するリスクが高まる。
抽象化後:平常時の業務量に対して処理能力を最適化してしまうと、大きな環境変化が起こったときに対応できず、組織は滅亡してしまう?
本を読んだ後は、上の例のような抽象化することが大切であり、また、その副次的な効果として議論に強くなるといったこともあるとのことだ。最初はなかなか抽象化できないが、慣れくると仕事に関する思わぬアイディアが出てくることもある。
一方、本を読んだ後に抽象化を行わない、ただ本を読むだけの人は、どうだろうか?著者は、そういう人を、“ただの物知り”だと言い切っている。必ずしも読書を仕事につなげなければいけないわけではないが、貴重な時間を投資して読んだのだから、そこで得た知識を仕事に活かさないのは、とてももったいない。
というわけで、最初にも書いたが、読書がうまく仕事に活かせてないと思う人におすすめしたい一冊である。