最近のビジネス雑誌でも取り上げられている「地政学」という学問を知っているだろうか。歴史や政治にあまり興味のない私だが、地理×戦略という新しい学問にこの本で知り、一気に引き込まれた。この学問は日本での研究は活発でないものの、海外では外交戦略や軍事戦略で重要な役割を果たしている。
本書の目的は、めまぐるしく動いていく現代社会において、表面的な情勢がどう動いたとしても変動しない「本質(大国を動かす掟)」を読者に理解させることである。
著者の佐藤優さんは、元外交官という諜報の専門家であり、圧倒的な読書量で当代屈指の知識人といわれているおり、地政学を知らない人でも読みやすい平易な内容でかつ、ブックガイドや参考文献も充実している。
主なトピックは以下である。
①アメリカの新帝国主義・孤立主義への回帰、イギリスのEU離脱の背景として(ヴィクトリア朝の)光栄ある孤立。
②ロシアがグルジア、ウクライナ、クリミアにこだわる理由とは?(キーワード:緩衝地帯、面の国境)
③中国が西沙・南沙諸島に強硬な海洋進出をしている理由とは?(キーワード:一帯一路、海洋国家)
さらに、新疆ウイグル自治区の第二イスラム国化のリスクとして山、陸・海・空・宇宙に続く、第5の戦場といわれる「サイバー空間」にまで言及しており、今までの地政学の本とは一線を画すものとなっており興味深い。
私自身、地政学という新たな視点で物事を見ることで、歴史上の出来事や昨今のニュースをより深く考察できるようになった。今まで歴史など人文系に興味のなかった理系の方に読んでほしい。