評者が本書を知ったきっかけは、友人からオススメだからあげる、と本を送って貰ったことなのである。その時評者はその友人に、ある悩みを打ち明けていた。その処方箋としてわざわざ送料と書籍代をかけて送ってくれた、その内容は果たして?と到着次第すぐに読み始めた。
366頁、どこから開けても良いようになっている。つまり1日1ページ、格言のように、哲学書を読むように、言葉のなかにたゆたい内省するように構成されている。
例えばある頁を開くとこんな感じだ。
“神はさまざまな人を通じて私たちに語りかけます。「あなたがこのままの私を愛するなら、天国までもいくでしょう」
(中略)
もしその人がはなれた場所にいれば、対立はないはずです。でも対立とは、私たちが内面で何を癒す必要があるのかを見せてくれているのです。”
フレーズの解釈は自分の心の中にある。時に目の前に起こったことをどう捉えるかのヒントになったり、目から鱗が落ちた思いになったりすることもあるだろうし、難解すぎることもあるだろう。しかし、文字を追い、自分に置換え考えること自体に、自分や悩んだ人間関係の相手を客観視する効果があるように思える。客観視する、ということはその人間関係の渦から飛び出て俯瞰し、「大したことないや」とか「今度は成長した」など自分を慰めたり褒めたりすることに繋がる。
この本の使い方を書いたページには、「このワークブックはヴィジョン心理学にもとづいています。(中略)人間の経験の本質的な部分に焦点をあわせる新しいセラピーのモデルです。」とある。
セラピー、癒し。まさにそんな本だ。そのために友人は私にこの本を送ったに違いないのである。
1997年10月31日発行
著者 チャック・スペザーノ
発行所 株式会社ヴォイス