「年末ジャンボ」での運試しや氏神様への初詣は、言うまでもなく年末年始の恒例行事だ。開運、強運、と聞くとあやかりたい日本人は多いだろう。本書の表紙はこれ以上ないくらいの大フォントで『強運』。スピリチュアルなのかどうなのか?2023年はこの本で運をつかめるのか?と気軽な気持ちで本を開く。
とそこには意外と骨太な論調が繰り返されていた。まず大きく印象に残るのは、繰り返される『1つ上のことに挑戦する』ということだ。松下幸之助さんの例や著者みずからの例のもとに、お金が欲しいなら働け。目の前の皿洗いを一生懸命やればやがてその場の長に抜擢され、出世とともにやりがいも大きくなる。手が届くところに上がる、運も1つ上のことに挑戦することで開けてくる、と説く。
そして曰く、必死とは必ず死ぬと書く。仕事に必死ですか?もし3日以内にある営業努力をしなければ銃殺と言われたら、やるでしょう、と。
自ら経営者でもある著者は、「最大の敵が出てきたら自分も同じことをやる」「カーネギーの『人を動かす』を7回読むなど営業の勉強をして、自分中身を入れ替えればよい経営ができる」など経営論、人生論にも拡がっていく。表紙の帯にあるように、運を引き寄せるには法則があり、そのノウハウのオンパレードだ。
そしてもう1つの本書の特徴は、分かりやすさだ。評者は本書を、走りながら耳読で全て聞いた。『Audiobook』では朗読の声もなんとも著者に諭されているような語り口調。ながら耳読もできるくらいの分かりやすさで、すっと頭に入ってくる。
さらに、実は本書の中ではこのわかりやすく人に教えること、についてはこう書かれている。「人の役に立つことを、分かりやすく、楽しく教えないと現代は通用しない」。評者は骨太な運を掴む人生訓を分かりやすく読み取ったと同時に、この読書に十分楽しまされていたのだ。