「万博のスタッフは全員読め!」
こんなセリフが出た動画があった。なぜそう言われたかというと、その本がおもてなしの心が書かれた本だからである。おれは、温泉旅館の様なおもてなしが大好きなので、読んでみたら面白くて一気読みしてしまった。
内容は、日本にディズニーを呼ぶための史上最大のプレゼン、そのプレゼンをした堀貞一郎、その師匠の小谷正一、ウォルト・ディズニーの話。
【史上最大のプレゼン-ディズニー招致対決-】
ディズニーを日本に呼ぶときに、三菱と三井でプレゼンバトルがあったのを初めて知った。そしてディズニーを作る場所も、三菱は、富士山麓、御殿場近くの富士スピードウェイ周辺、三井は、浦安だった。
三井側のプレゼンがすごかった。簡単に言うと「やれることはすべてやる」ということ。
【プレゼンの最初に心を掴む】
プレゼン最初は、アメリカから来た日本語のわからないディズニー首脳陣に対して、あえて日本語で大きな抑揚、身振り手振りで話す。「日本語がわからないのになんで言ってることがわかるんだ!!」と首脳陣の心を掴んだ。プレゼンをした堀貞一郎のとっさのアイデアだった。
【おもてなし祭り】
ディズニー首脳陣が、東京、帝国ホテルから浦安までの移動する際は、豪華バス、振袖姿のコンパニオン、首脳陣が注文する飲み物が全て出てくる小さな冷蔵庫(マジックボックス)、日本食に飽きたころに「時を忘れるステーキランチ」でおもてなし。浦安までの時間を楽しく短く感じさせる。
浦安市役所前では、市長、職員が横断幕で出迎えて、アメリカ国旗を持った子どもたちがバスを囲んで歓迎する。これは、ディズニーがアメリカ国内でリゾート計画を進める際、地元の反対で中止になったことがあり、そのような心配をさせないためのはからい。
ディズニー建設予定地に着くと、3台のヘリコプターに乗ってもらい、東京駅へ。さらに東京-浦安間の距離を短く感じさせる。そして、新宿にある、当時日本一の高さの三井ビルも見てもらい、「このビルを作った三井が日本にディズニーを作ります!」と話す。
浦安案の弱点は、海の汚さ。プレゼンの数日前から海岸のゴミ拾いも行った。
この結果、ディズニー側は何の質問も無く、三井に決めたという。
【やれることはすべてやる】
心配事に対してやれることを全てやり、強みをいろんな形でアピールし、喜んでもらえることをすべてやり尽くした。そのための事前調査も徹底的。自分たちの強み弱みだけでなく、聞く側がどんな人たちでどんなことが好きでどんなことが心配なのかも、綿密に調査し尽くしている。素晴らしいおもてなし精神。
【テレビが始まる時代からのエンタメを作った人々】
プレゼンの話の次は、プレゼンをした堀貞一郎、その師匠 小谷正一の物語が続く。彼らは、テレビ誕生の時代からいろんなエンタメを手がけてきた。百貨店の絵画展の草分けだったり、大阪万博を手掛けたり、球団を作ったり、いろんなエピソードが手でくる。日本のエンタメ誕生の話がたくさん出てきてとても面白い。
特に、小谷正一は、「人の心を掴む天才」「インテリヤクザ」と呼ばれていた。いつも人を褒めて、時には「ハッタリかましたれや!」と怒鳴って、人をその気にさせた。人をしっかり喜ばせつつ、日本を元気にするためにいろんな事業の実現に情熱を燃やした。
新しいものへの興味、アイデア、夢を実現させる情熱。昔の話と言っても、本質は今と変わらない。
アメリカのディズニーを見た人全員が夢を見る
後半は、元祖ディズニーの誕生、三菱三井プレゼン後の東京ディズニー建設までの奮闘が描かれる。
ウォルトがディズニーランドは作るキッカケは、いくつかあり、その一つはディズニー映画上映のため、デンマーク コペンハーゲンにあるチボリ公園を訪れたとき、行き届いたサービスと清潔さに感激。アメリカの遊園地を訪れたとき、その落差に落胆したときでもあるという。
この章でも語られているが、結局エンタメは尊敬を前提としたパクリの繰り返し、と言っている。だから、テーマパーク最高峰のディズニーも、何かをもとに出来ているということだ。なので、いろんな情報を取り入れて、体験していくことはとても大事なこと。
そんなディズニーがまだ日本に無い頃、アメリカのディズニーランドを訪れた日本人たちは、「日本にディズニーができたら夢のよう」と思っていた。プレゼン後も、本契約までの間、反対派と推進派の攻防が続いたが、夢を実現させる情熱を持った人々の奮闘で建設へ向かう。ディズニーオープンのシーンでは、奮闘した偉人たちが泣いていて、すごく感動的だった。
【まとめ 歴史を学ぶことの大切さ】
昭和のエンタメを生んできた人々の生き様は、今の時代にとってのとても学びがある。新しいエンタメを広めるためにはどうしたらいいか。ゼロからではなく、歴史や体験、情報がそれを助けてくれる。
そして、何かを実現するために、人を動かすために、全力のおもてなしをする。その精神はいつの時代も変わらない。とても良い本に出会った。読み応えあった!紹介してくれたノザピに感謝!