人の死は突然やってくる。死後は種々の事務手続きなど嵐のような慌ただしさ。ひと段落ついて落ち着こうと思った時に、相続という作業が待っている。その時になって初めて相続に向き合うような状態になると揉めることが多い。すなわち誰が家などの不動産を相続するか、どういう分配方式にするかということ等。本書では夫に先立たれた妻と2人の子供をモデルケースとして、まんがで紹介しながら相続の概要がつかめるようになっている。
人が亡くなったらどうなるのか。医師の死亡診断書の作成に始まり、死亡届の提出、(葬儀の手配)、(故人に縁のあった人への報告)、除籍謄本や住民除票の取り寄せ、金融機関の口座凍結、年金の支給停止手続き、健康保険や介護保険の資格喪失手続き、生命保険金や死亡退職金、遺族年金の受け取り、故人の準確定申告、各種民間サービスの解約など多岐にわたる。本書は相続の本であるが亡くなってからの過程もイメージできる。自身が相続に関わるような身近な人の死というものはなかなか想定できないことではあるが、もしそうなったらどういう流れで進めていく必要があるのかということは知っておいた方がいい。そうすればパニックにならずに進められる。
相続税の申告と納税を行うまでのタイムリミットは基本的には10か月以内。それを過ぎると延滞税や無申告加算税がかかる場合がある。また、相続放棄の申請が認められるタイムリミットはたった3か月。すなわち「全く相続はしません」と言う人がいたとする。自分には関係が無いと思って相続に関する手続きを3か月何もしなかった。本人の意思はどうあれ、3か月以内に相続放棄の申請をしなかったということは「あなたは相続するにちがいない」とみなされて、必要な処理を行わなければならなくなる。これは故人が借金しか残しておらず相続をしたくない場合にも必要な手続きである。3か月以内に申請をしなければ故人の借金を背負うこととなるのだ。正に知らぬは恐ろしい世界。無知ではヤバイの世界である。
著者の西原憲一氏は税理士であり会計事務所の代表やファイナンシャル・プランニングを行う会社の代表取締役を務めている。本書以外にも相続や税務に関する出版物に多数関わっている。
身近な人の死後の手続きや相続の進め方など、あまり考えたくはない内容ではあるが、何も知らないままにその時を迎えてしまうと、パニックになり親族間で争いが起き、最終的にはその故人の存在が憎くなってしまうこともあるかもしれない。そうならないためにも早いうちから相続など法律の知識を身につけ、関係者と相談し、その時に備えることが必要だ。