魚料理は美味しい。ホッケやししゃもにエイヒレにお造り・・・、仕事終わりの会社の仲間との一杯や友人との思い出話をその美味しさで彩ってくれる。この作品はそんな美味しい魚料理を人魚姫が食べる話だ。
魚にとって人間は自分たちの生活を脅かす天敵だ、ある日突然自分たちの大切な仲間を連れ去ってしまう。そのあとはもう煮るなり焼くなりと、好きなようにされるしかない。人魚姫の名前はエラ、エラは人間に釣られてしまった仲間をせめて供養しようと人間の世界に向かう。魚料理に姿を変えたかつての仲間の姿を目の前に祈りを捧げるが、ほんの小さなきっかけから食してしまい、その美味しさに気づいてしまう。この作品は仲間への食欲に揺れる人魚姫の物語だ。
料理の美味しさは味だけで決まるものではないと思う。その料理ができるまでの料理人の想い、素材が料理人の手に渡るまでの経緯など、その料理に込められたストーリーがその料理の味を一層引き立てる。故郷の食材を使用しているなど、自身との関連度が高ければなおさらだ。そのような意味では本作品に出てくる料理は人形姫のエラにとっては最高の味だろう。何故なら目の前に出された魚料理たちは、幼少期から苦楽を共にした仲間たちだからだ。
食事をする際には両手のひらを合わせ“いただきます”というが、あれは“命をいただきます”という意味であることは小さい時に家庭や学校で教えられた。本作品ではその“いただきます”が、最も身近な者へ向けられる。本書は食べるとは何か、命とは何かを、私たちに教えてくれる。
料理漫画の可能性を知りたい方にはオススメの一冊だ。
- 作者: 野田宏,若松卓宏
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/05/12
- メディア: コミック
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