アップルといえば、iMacやiphoneなどの爆発的な人気により、現在では知らない人がいないほどの世界的規模の企業となったが、40年程前は少人数の従業員による小さな企業にすぎなかった。
現在のスティーブ・ジョブズのイメージは「神」のような存在と崇められているが、当時は副社長という肩書きやスーツ姿も似合わないような、独特の個性を持ち芸術家肌で気が変わりやすく、社内でも不協和音を響かせるような存在であった。
しかし当時、彼らが開発していた製品は、日本の技術をもっても到底追いつかないようなレベルにまで到達していた。それも安価で。それは、大のおとなをも興奮させるような仕上がりであった。その製品とは、「AppleⅡ」ユーザーの手で完成する未完成品であり、8つの拡張スロットを使えば、今後売り出される製品を拡張することができ、様々な人々の要望に答えられるのだ。
日本ではコンピューターといえば、公の機関で使われている大がかりな計算機のことをいっていたその時代、当時としては画期的な製品に、また個人用のコンピューターは、夢のまた夢としか思えなかった日本人は瞬く間に翻弄された。
「AppleⅡ」に魅了されたのは一部の技術者のみではなく、多くのマニア達も買い求め、たった一台のお試し輸入が、あっという間に本格的な空輸が必要となる状態となった。しかし、このような状態とは裏腹に、アップルは企業としてはまだまだ成長段階であり、どちらかといえば、企業というよりはサークル活動のような雰囲気でしかなく、アメリカ国内の顧客対応だけでも、てこずる状況にあり、海外の顧客にまで対応できる状態ではなかった。
そのため、アップルは多くの潜在的顧客が存在する日本市場を重要視し、東レとの提携やアップルジャパンの設立をすすめたものの、日本特有の文化、商習慣の違いにより売り上げ低迷へとつながった。
それは、日本人が重視するものとは異なり、「漢字への変換ができない」「サポートがない」「マニュアルが簡素」「不良が多い」他、日本企業関係者からの不満はつのった。現在のアップルからは想像できないが、アップルでさえも試行錯誤しながらも、うまく進んでいけない知られざる暗黒の時代があった。
本書は、1996年に発刊されたが、現在ではその人気からか高値で売られ、入手困難なことから復刊された。さらに誰もが読みやすいように、ストーリーごとに、漫画が加えられている点もとても興味深い。
また、スティーブ・ジョブズやアップルの華々しいエピソードが綴られている多くの書籍とは異なり、アップルの禁断の果実に翻弄され、日本へ初上陸させた日本人の熱い思いと知られざるアップルの歴史を知ることができる貴重な一冊である。
林檎の樹の下で(上)禁断の果実上陸編 アップルはいかにして日本に上陸したのか
- 作者: 斎藤由多加
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/11/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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林檎の樹の下で(下)日本への帰化編 アップルはいかにして日本に上陸したのか
- 作者: 斎藤由多加
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/11/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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