家から自転車で20分、田んぼを抜け自転車をガードレール付近に停め、雑木林の中の秘密基地に午後2時に集合する。基地という言葉ほど立派なものではなく、倒れた木で骨組みを作りその上に枯れた蔓をたくさん被せ屋根を作る程度のものだ。当時そこに機能性を求めるつもりは全くなく、自分たちが秘密基地という特別な場所を保有していること、その場所を中心としたサバイバルゲームや探検などを共有できる仲間がいること、そのようなことが当時の価値だったように思う。小学生の頃の記憶が蘇ると同時に、この手の好奇心が全く衰えていないことを本書は教えてくれる。
子供の頃憧れた秘密基地が、大人になった今見当たらなくなってしまったことは、とても残念なことだと思っていた。しかし本書に出会うことでその考えは間違いだったことに気づく。無くなってなどいなく、秘密基地は各地で存在していたのだ、なぜその存在に気づかなかったのか、今思えば“秘密基地”だからだ。それはそうか、そもそも他の施設とは情報量が圧倒的に少ないのだ。
“秘密基地”という言葉が指すものは幅広い、本書でも便宜上7つに分類している。セルフビルド、廃墟・屋外、ツリーハウス、リフォーム、たまり場、公共空間、ビジネス、この7つだ。どのカテゴリーも魅力的だが、ツリーハウスで例として紹介されているSLOW BASEは秘密基地に心踊る者からすれば理想形かもしれない。また、秘密基地の元祖として日本の茶室が取り上げられていることも興味深い。ともすればSFや海外映画の世界の産物としてのイメージが強い秘密基地だが、もしかしたら和の精神と通じる要素も少なくないのかもしれない。情報が少ない分、秘密基地ネタは好奇心が広がるの格好の情報だ。
本書はあれから大人になったあなたへ宛てた手紙だ。大人になったことで捨てざるを得なかったことはあったかもしれない、ただ得てきたことも多いはずだ。知識や経験、仲間にお金、今手に入れたものはあなたの好奇心にきっと力になってくれるはずだ。作ろう秘密基地!
大人が作る秘密基地 屋外、ツリーハウス、リノベーション、シェアオフィスまで
- 作者: 影山裕樹,竹田嘉文
- 出版社/メーカー: DU BOOKS
- 発売日: 2014/04/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る