『ヴェニスの商人』著者:シェイクスピア、訳:福田 恆存(新潮社、1967/10/30)
古典を読むには体力を使うと思いました。
マラソンと水泳では使う筋肉が違うように、日頃の読書とは違う筋肉を使っているようでした。
また、「船が沈んでしまった」という表現も比喩ではなくそのままの意味だったりするので、何かの比喩や伏線と思って読み進めてしまうと、後半とても混乱します。
古典を更に楽しむためには量が必要だと思いました。
ヴェニスの商人は、タイトルと結末くらいは多くの方がご存知なのではないでしょうか。
しかし、実はクライマックスを迎える場面に到るまで、複数の物語が同時に走ります。
決して長い読物ではないので、これらの物語が本当に最後に収束するのか不安になりました。
しかしそこはやはり名作と言わざるを得ないのか、主人公アントーニオーの投げた善意のブーメランが大きな弧を描いて戻ってくるが如く、最後には複数の物語が一つになります。
単に肉を切るか否かの話かと思っていたら、そこに到る過程には沢山の恋・愛、そして差別が絡みます。
とても短い物語なので、古典に挑戦したみたい、そう思う方にはオススメの一冊です。
そしてこの物語を読み終えたあなたはこう思うはずです。
「古今東西、女性は強い。」と。