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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】失敗って本当は何なのか? 『失敗学のすすめ』

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著者は工学院大学教授、東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏であり、専門はナノ・マイクロ加工学、知能化加工学、創造的設計論などです。

本書は失敗を工学、設計学の視点から見ています。機械設計では模範的な知識を使っても、設計図通りに作っても、思い通りに動かない時の方が圧倒的に多いです。既存の方法でダメだった時、次に創造が始まります。創造的な設計をするためには、多くの失敗が必要ですが、その創造には失敗という「痛い目」が必要になります。

東京大学名誉教授で造船学の山本義之氏は「体感を伴わない知識の危険性」を示します。
山本先生は太平洋戦争中にマリアナ沖海戦でガソリン漏れと換気機能の不十分のため沈没した航空母艦太鳳の大爆発の原因分析をしていました。この太鳳は当時日本より優秀だったイギリス、アメリカの艦隊を参考に建造されましたが大爆発し多くの死傷者が出ました。

太鳳の大爆発の数十年前にもガソリン漏れ由来の爆発事故はあり、対策の重要性を認識していましたが、実地における設計指針、思想を伝承できなかったのです。

では、もし太鳳の設計に携わった人間の中にガソリン漏れによる爆発の経験と対策の検討をした人間、「痛い目にあった人」がいたならばどうなっていたでしょうか?
 失敗と危険が身に染みている人の危機管理能力と、机上の空論(知識)だけの人の危機管理能力はどちらが本物でしょうか?

行動して失敗を体感した人と、知識で失敗を頭で学んだ人、どちらが大事でしょうか?
どちらの人が設計した船に乗りたいですか?  

 

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)