HIU公式書評Blog

HIU公式書評ブログ

堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

MENU

【書評】だから歴史を紐解くのは面白い『藤原氏の正体』

奈良時代の歴史を勉強していて、「百済」!?(くだら=クンナラ、大きな国という意味という説あり)「え、なぜ白村江の戦い朝鮮半島に遠征?無謀では?」と思ったそこのあなた。それは戦国時代の朝鮮出兵と並び、遥かなる海の向こうへの無鉄砲で唐突な?!戦いにおもえる。
・・・となるといろいろな壮大ロマン(ロマンスではなく)も浮かび上がるのが世の常。
本書は、そんな背景の七世紀、藤原氏の開祖「中臣鎌足」はどこから来たのかの謎ときから、その子であり天皇外戚として君臨した藤原不比等、そしてその子孫に至る藤原家の政治、そして現在に至るにまで脈々とつながる藤原氏の正体に迫る論考である。

なかでも中臣鎌足の両親はどこから来たのか?!という謎解き部分が面白い。

彼の出自の第一の説は、茨城県常陸の国鹿島神宮の神官でが祖先であったというもの。そして720年の『日本書紀』に大きく関与したとされる不比等が、藤原家の権威付けのために中臣鎌足天照大御神の天岩戸物語に出てくる「天児屋命」の末裔と書かせたものだという通説だ。藤原氏が祀る奈良の春日大社において、鹿島神宮香取神宮の神様をその権威である「天児屋命」よりも上に祭っているのが常陸の国出身の証拠だというのだ。

そして第二の説はもともと大阪の枚丘周辺にいた中臣氏が祖先だというもの。

そして著者が唱える第三の説。なんと渡来人由来でその正体は白村江の戦いの時点から・・・・(本書を読んでのお楽しみ)

そんな仮説から、その後の政治で菅原道真を左遷したり、摂関政治や(自分たち以外の)土地の私有化を抑制しよう動くなど自家以外の繁栄を拒み、そして祟りに怯える藤原氏、、という構図で論考は進んでいく。

歴史・事実は一つしかない。けれど勝者の作った歴史であることも確かだ。しかし裏から見ればいろいろな矛盾に辻妻があう?!だから歴史を紐解くのはやめられないのだ。

平成20年12月1日発行 
著者 関 裕二
株式会社新潮社