皆さんこんにちは。齊藤彩によって著されたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』は、一人の女性が母親によって課された過酷な期待と、それに伴う心理的・物理的な束縛、そして不幸な結末を淡々とリアルに描写しています。幼い頃から医学部への進学を強要された娘の記録は、教育虐待とも言える状況下での親子関係の複雑な歪みを浮き彫りにします。
心理的な呪縛
この物語の核心は、母親による絶え間ない期待とその期待に応えようとする娘の苦悩にあります。母親の強要で、娘は自己実現の機会を失い、自己肯定感が著しく損なわれるという、毒親とも言える関係性が浮き彫りにされています。
自由への渇望と絶望
「どちらかが死ぬしか解決の方法はなかった」という娘の言葉は、読者の心に深い衝撃を与えます。常軌を逸した母親の束縛に苦しむ娘に、私は別の作品で読んだ「逃げるという選択肢を忘れないでくれ」という台詞を思い出しました。
しかし、家出を試みたものの、私立探偵を使って連れ戻されるなど、逃れようのない状況が綴られています。この絶望感は、多くの読者にとって想像を絶するものでしょう。
社会への問いかけ
このノンフィクションは、社会に対する問いかけを含んでいます。家庭内での教育虐待に対する認識の欠如、子どもの精神的な健康を守るための制度やサポートの不足が読み取れます。とはいえ私自身、読み終わってしばらくした今でも心のどこかでノンフィクションとは信じられていません。(信じたくありません)
総評
「母という呪縛 娘という牢獄」は、心が痛むほどにリアルな家庭内のドラマを淡々と描写しています。メンタル的に読むことは決して楽ではありませんが、親子関係、教育について深く考えさせられる一冊です。