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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】『ムシカ 鎮虫譜』- 異色の音楽ホラー小説

井上真偽の『ムシカ 鎮虫譜』は、音楽とホラーの融合が生み出す独特の世界観を持つ小説です。瀬戸内海の小さな無人島を舞台に、音大生たちと巫女たちが虫を鎮めるという、異色のストーリーを展開します。

物語は、夏休みにこの島を訪れた音大生たちから始まります。島には、音楽を使って虫を鎮める巫女がいるという伝説があり、学生たちはこの不思議な島でさまざまな冒険を繰り広げます。

物語の中心には、蟷螂や雀蜂など、異常なほどの大群の虫が登場します。これらの虫を鎮めるため、主人公たちは音楽を使用します。
本作では、音大生や巫女、ジャーナリストといった多彩なキャラクターが登場します。各キャラクターが持つ個性や背景が物語に深みを加え、群集劇の趣きを生み出しています。

『ムシカ 鎮虫譜』は、その独特の雰囲気とホラー、ミステリー、冒険小説の要素が融合した作品です。アニメ映画のような感覚で読み進めることができ、音楽と虫の豆知識が散りばめられている点も魅力的です。井上真偽の創造力に富んだ世界は、新しい視点で物語を楽しませてくれます。
この物語は、音楽と自然、そして人間の内面との絶妙なバランスを通じて、読者に異なる体験を提供します。私は特に物語の最終盤で登場人物の1人が口にする、音楽に対しての考え、気持ちに強い共感を持ちました。多くの人にこの感覚を味わってもらいたいと思います。読後感は人それぞれ異なるかもしれませんが、一度は訪れてみる価値のある、井上真偽の奇妙で魅力的な世界です。