「まあ宇宙つながりとゆうか気象つながりとゆうか」
天才の思考は限りなく、遠く広がっていく話をしようと思う。
この物語は空想ではなく、実在のポーランド人ピアニストがモデルだ。
巨匠が隠し通した唯一の弟子、彼の実家は養蜂家で蜜蜂とフランス中を移動する。故にピアノを持たず、その自由な音楽はピアノ界を破壊する時限爆弾として育てられる。
音大の学長が探し続けた天才少女は、突然の母の死に耐え切れず大きなコンサートから逃げ出し、音楽界から姿を消していた過去を持つ。幼き日よりプロだった。
日本でイジメられていたフランス系移民の心の拠り所はピアノ。自分を認めてくれた日本人少女との約束を守り、祖国に帰ってからも続けたピアノの才能は開花する。アメリカの重鎮に発掘された彼はジュリアード音楽院の王子と祭りあげられる。
大金持ちの天才中国系アメリカ人、成長著しい韓国勢、プロを諦め切れない楽器会社の社員。
彼らは日本のコンサートで競い合い、自分を見つけていく。
努力する人間はプロには慣れない。
天才たちにとってコンテストすら戦いではないのだ。
蜜蜂と遠雷は言葉にリズム感がある。
それは、読み手を空に連れて行くリズム。
音楽のように、私達の思考を空高く遠くに連れて行ってくれる。
音楽天才たちが見る先は広く、争いは無いのだ。
天才たちの見るところを体感して欲しい。
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2016/09/23
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