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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】元祖フィギュアのカタログ『土偶を読む図鑑』

 

前作『土偶を読む』の完全ビジュアル版。発掘資料の速報や各地で縄文展が行われる中、ぜひさらっとでも目を通してほしい本である。豊富な写真やマンガからその独特な形態を解説し、著者の「土偶縄文人の生業(ここでは「食料獲得のための労働」を指す)と結びついた、生活の道具である」という説の理解を深められる構成となっている。

岡本太郎は片隅に追いやられた火焔型土器を発見し縄文特有の造形美に注目してアートとしての地位を唱えたが、本書は土偶のデザインと著者の説であるモチーフをビジュアルで確かめることができ、アート作品集としても読める本である。世界に誇る日本のやきものの歴史の中でもずば抜けて奇抜な縄文のやきものについて知ることは一見の価値ありだ。

遮光器土偶は顔に大きなサングラスのようなものがあり、腕や腰、足のボテッとしたボリューム、そして体中に雲形の模様が巡っている。確かに女性や妊婦のデフォルメとしても異様な様相である。著者はこの土偶サトイモがモチーフだという。サングラスは親芋から子芋を取った跡、体のフォルムはサトイモの丸み、体の模様はサトイモの茎に見えるという。これらを豊富な写真をもとに解説されている。

感想として、自らの感覚に沿った判断が誤りにつながることには注意が必要なのだが、こればかりはどうにも納得する他ない気持ちである。そして著者は視野を広げて世界の謎フィギュアにもこの説の適用を試みており、この営みも十分に汎用性のある方法論として可能性がありそうである。なにより可愛らしいフィギュアの豊かなバックグランドを読み取ることはオタク心をくすぐる。

土偶の作品鑑賞やデザインの参考書としてもおすすめする。

土偶を読む図鑑』
作者:竹倉史人
発売日:2022年4月23日
メディア:小学館

土偶を読む図鑑