「上善水の如し」と聞いて、口当たりのよい日本酒を思い浮かべる人が殆どではないか。しかしこの言葉、著者が生死の境を彷徨ったときからの座右の書、と推す「老子」からきている。そんなエピソードを聞くと読まない手はない、と本書を手に取った。
水について老子は、「天下の至柔にして、天下の至堅を馳騁す。無有にして無間に入る」と言っている。つまり、一滴の水は非力でも長い年月をかけ石に穴を開けられたり、また水には形がなく、どんな器にも柔軟に注がれたりする。つまり本当に強いのは堅い石ではなく水であり、水のように柔らかく謙虚であれということ。因みに上善は最善の生き方とのことである。
また、「万物陰を負いて陽を抱き、冲気以て和を為す」いわゆる陰陽論が説かれている。難解だけれど読みやすい本、のようにヒット商品は物事の陰と陽の面の二者択一ではなく、その矛盾を和ごし(冲気)、両立されている。続いて損して得取れの話、、と、ビジネスや生活に役立つ知恵が展開される。
中国古典の教えを読むと、2500年前の昔から人は変わらないと改めて思う。著者によれば、孔子の「論語」は社会の中から社会をみたよりよく生きる人生ガイド、対して「老子」は宇宙的視点から社会をみた、何かを変えたいときのガイドブックとのこと。
確かに、感情的な自分を戒めたり、自分の悩みは小さいものだ、と悩みから解き放されたり、上善水の如しのようなすっと入る教訓を得たり、など得るものは大きい。超訳、で現代的な分かりやすい事例満載なのがさらに親切設計だ。