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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】 伊坂幸太郎の描く本格的ミステリー『夜の国のクーパー』

 

著者の伊坂幸太郎さん自身が、“僕の小説の中ではもっとも本格的ミステリー度が高い自信作です。“と、称する長編ミステリー。

「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。 戦争が終わったんだ」と人間の“私“に語りかけるのは、雄猫の“トム“。
このトムが、鉄国からの占領軍と、トムの住む国(町)の人間とが対峙する現在進行中のドラマを実況中継する形で物語は語られる。

①猫のトムの視点で物語が語られる様は、夏目漱石吾輩は猫である を、
②人間の“私“は、海釣りに出かけたところ、悪天候で船がひっくり返る。私が意識を取り戻すと見知らぬ土地におり、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。
そこで灰色の雄猫の“トム君“から話しかけられる様は、トムソーヤの冒険 を、
③雄猫の“トム“と、鼠たちのやりとりはトムとジェリー を、
④町の外に杉林があり、夏になると杉の何本かが
人間を襲う“クーパー“という歩く植物に“変態“する。クーパーの侵入を防ぐために、町の周囲には高い外壁が防御のためにめぐらされている。
また、“クーパー“を倒すために毎年町の人間の中から数名が選ばれるといった設定は進撃の巨人 をオマージュしているように感じた。

雄猫のトム•人間の私•猫たちと交渉する鼠たち・
町の人間•外からくる敵国の兵士たち•そしてお化け植物のクーパー。
登場人物がたくさんだけど、物語の構成が素晴らしく、ストレスなく読了。
伏線の回収なども素晴らしく、さすが!!と思った。

ぐんぐん伊坂幸太郎ワールドに引き込まれる、
おすすめの1冊です。

夜の国のクーパー
伊坂幸太郎
初版:2015.3.20
初版(新装版):2022.1.28
メディア:創元推理文庫