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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】あの小豆色の車体を見ると、なぜか心が落ち着く。『阪急電車』

 

阪急電車が好きだ。
平日の昼間、電車の先頭車両に乗って、車掌室ごしに移りゆく風景を眺める。くるりの「赤い電車」なんて聴きながら、カタンコトンと優しく揺られていると、なんとも贅沢で、幸福な気持ちになる。(あの曲の舞台は東京だけど)

冒頭からつい愛を語ってしまったが、阪急電車をご存知だろうか?落ち着いた小豆色の車体が特徴的なので、一度でも見たことのある人はきっと忘れないと思う。

そしてそんな阪急電車で物語は繰り広げられる。
大阪梅田へ直接向かう宝塚線と、西宮北口神戸線へ連結する今津線は、阪急宝塚駅で「人」の形に合流している。評者がよく利用するのは阪急宝塚線だが、本書の舞台となるのは、宝塚線ではなく今津線である。

理不尽に別れを告げられた腹いせに元彼の結婚式に純白のドレスで行く女、ママ友との自分を殺したお付き合いに悩む主婦、年上彼氏に合わせようと背伸びする愛らしい彼女。電車の窓から見つけた小さないたずらと、そこから始まる恋物語、、、。

宝塚駅から西宮北口駅を舞台にした、片道15分のローカル線で起きる、小さな、だけどとても素敵な物語たち。女性作家である有川浩らしさ全開な、文章の細部まで気をつかった、なんともほっこり、ときにはきゅんとする作品となっている。

評者は阪急電車の、あの小豆色の車体を見るととても落ち着く。なんというか、あの色がこれまで生きてきたいろんな思い出とセットになっている感覚がある。これは阪急沿線で育った人には共感できる感情だと思う。本書を読んで、より一層阪急電車への愛が高まってしまった。阪急電車好きは是非とも読んでみて欲しい。

ちなみに、最近阪急梅田駅の構内にTULLY'SCOFFEEが出来て、そこではコーヒーを飲みながら阪急電車の発着の様子を思う存分眺められる。カップルの待ち合わせ風景なんかも見えたりして、微笑ましい気持ちになる。時間が空いたとき、この本を手に持って、ぜひ行ってみて欲しい。

 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫