姦通の罪により切腹を言い渡されるも、「痛ぇからいやだ」という理由で流罪になった旗本・青山玄蕃。
そんな一見自分勝手な青山と、押送人である石川乙二郎との道中が描かれている。
押送人の石川は十九歳で真面目一筋。
そんな石川が道中で青山という人物に触れ、自らの過去を回想しながら、徐々に成長していく姿が印象深い。
本書では道中出会う様々な人との交流が、その人の視点で綴られている。
心情の理解がしやすい構成のため、行動の原因がよく分かる。
著者は「蒼穹の昴」,「鉄道員」で知られる浅田次郎。
著者のファンにもおすすめ出来る本だと思う。
作中で石川が言うように、青山は単なるろくでなしではない。
彼が本当に守りたかったもの、腹を切る以上の痛みを、共に旅をしながら感じ取ってみよう。