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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】ガンダム誕生にも関わったSF小説。『宇宙の戦士』

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ヒューゴ賞受賞!と、高らかに表紙に謳われ続けている本作の評価は高い。一般には、『スターシップ・トゥルーパーズ』というしょうもないハリウッド映画の原作と言えば分かり易いかもしれない。

主人公ジョニーは、高校を卒業するに際し、両親の反対を押し切り、親友に誘われるままなんとなく軍に志願する。
適性検査の結果、もっとも過酷な「機動歩兵」に配属され、以後はキャンプで厳しい訓練を受ける。
そんな最中、蜘蛛に似た宇宙生物と人類との間に紛争が勃発し、やがてジョニーたちの機動歩兵部隊も参戦する。

という様な粗筋だが、戦闘シーンがメインという訳ではなく、主人公ジョニーが、地獄の訓練と教育を受け、何度も除隊を考えながらも、ひ弱な新兵から職業軍人を自ら選ぶ様な男に成長していく様を骨太に描いている。
軍隊の訓練を描くということで、暴力肯定的な内容となってもおり、当時は騒然たる議論を呼んだらしいが、私の印象では、むしろ「戦争は絶対的か?相対的か?」という教官の問いかけに対して、ジョニーが答えに窮するなどといったイデオロギーに関する描写が興味深かった。

機動歩兵は、パワードスーツという強化装甲服を着込む。
着衣のように装着して体全体で操縦するというもので、日本版の挿絵に登場するパワードスーツのデザインは、スタジオぬえという有名なSF軍団の宮武一貴氏によるもので、これがSFファンに衝撃を与えた。
機動戦士ガンダムの製作にあたって、「ロボット」という呼び名を嫌った富野由悠季(当時は喜幸)監督は、この小説を知って、「モビルスーツ」という概念を思い付いたのは有名な話だ。
後年のSF作品に多大なる影響を与えた一作である。

 

宇宙の戦士

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