知人から三浦しをんさんの本がいいとお勧めされて、読んでみた。
古びた学生寮に住む学生たちが、弱小駅伝チームを作り、箱根駅伝を目指す青春群像劇である。
駅伝チームということもあり、一人ひとりのキャラがとても個性的に描かれている。
チームを作り、それを束ねるハイジさん。自身は負傷の過去があり、夢破れた青年だ。ハイジさんは、料理も上手で、仲間たちの栄養管理もしながら、トレーニングを計画していく。食事のシーンも楽しそうでなかなかいい。
彼の、静かだが芯のある呼びかけに、寮の学生は一人、またひとりと駅伝チームの仲間になっていく。
マンガオタクの王子もいいキャラだ。マンガの重みに床が軋み、下の階の住人からクレームが入るほどの王子。インドア派で、運動には縁遠い男。周囲に巻き込まれ、駅伝チームにほぼ強制的に参加することになるのだが、ダントツにタイムが遅い王子が、必死に走る姿は気の毒でもある。それでも彼は走る。
主人公カケルは、精鋭のランナーだ。彼もまたワケアリな人生で、逃げ足の速さでハイジさんに才能を見いだされる。他の登場人物の印象が強すぎて、主人公なのに私の中では、ちょっと影が薄い。
走るカケルの描写がストイックで、心情変化も含めて、とても私には真似できないと思ってしまう。それでも、寄せ集めのチームが何か奇跡を起こしてくれるんじゃないかと、ワクワクしてくるから不思議だ。
箱根を目指す過酷さと、駅伝チームの強い絆と、マスコミなどそれらを取り巻く世界。これを読むと、また少し違う視点で、箱根駅伝を楽しめるのではないだろうか。