とある漁港の焼肉屋で働く肉子ちゃんと、娘のキクりんの話。丸々と太って関西弁で、声の大きな肉子ちゃんは焼肉屋の看板娘。男に騙され、逃げられ、借金を背負わされてるのに、肉子ちゃんは今日も明るい。
一方キクりんは、細くて目が大きくとても可愛い。そして、可愛くて賢いことを自分自身で知っている。小学校5年生女の子は、自意識が発達してくるお年頃で、誰が好きで誰が嫌いか、誰のグループに属しているかなど、立ち振る舞いに悩まされ、毎日息苦しい思いをしている。
そんな悩みを肉子ちゃんに相談したところで何も解決しない。いっそのこと肉子ちゃんのようにありのままに生きられたらなあ、とキクりんは思う。そんな親子の物語である。
今、世間は、ありのままで生きようという言葉であふれている。言葉通り、ありのままで生きようと意気込んで行動したとしても、そのうち、陰口をたたかれるのではないかと心配し殻に閉じこもってしまう。ありのままで生きなきゃというプレッシャーと、それでもなかなか自意識を破れない現実に、心が疲弊してしまう。
そんな時、肉子ちゃんの大きな笑い声を思い出す。何も難しいことは考えてなくて、とりあえずガハハと笑っている。なんかすっと心が軽くなった気がした。
肉子ちゃんは海を見たときは、こう言う。「めっちゃ海やなあっ!」
海を見て、海だ、って言って何が悪い。