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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】『リーチ先生』 - 文化の架け橋としての陶芸の物語

皆さんこんにちは。『リーチ先生』は、バーナード・リーチというイギリス出身の陶芸家と、日本人青年沖亀乃介の交流を中心に展開します。この物語は、一人の外国人芸術家が日本文化に魅了されたという話ではなく、異文化間の深い理解と絆の形成を描いたものです。

横浜の洋食店で給仕として働いていた亀乃介少年。彼は偶然にも高村光太郎と出会い、その縁で光太郎の父である彫刻家・高村光雲の書生となります。この新たな生活が彼の運命を大きく変えることになります。光雲のもとで働いている時にリーチが訪れ、亀乃介が通訳としてリーチとの初めての会話を助けることから、彼らの15年間にわたる共同作業が始まります。

亀乃介はリーチとともに陶芸の世界に足を踏み入れ、日本での陶芸生活、英国への渡航、陶芸窯の立ち上げといった多くの冒険を経験します。リーチの芸術への情熱と、亀乃介がそれに応える形で成長していく様子が、読者に深い感動を与えます。この物語は、単なる師弟関係を超え、互いに異なる文化背景を持つ二人がどのようにして互いを理解し、尊重し合うかを見事に描いています。

リーチの陶芸に対する哲学と技術が、彼の作品だけでなく、彼と亀乃介、リーチの周りの日本の友人たちとの関係を通じても表現されている点は特に注目に値します。この友人たちが豪華メンバーで、前述の高村光太郎はじめ志賀直哉らの白樺派の面々や岸田劉生も登場します。

この小説は文化的な壁を越えた真の理解と友情の可能性を探るものであり、そのプロセスで亀乃介とリーチの人生がどのように変わったかを描いています。読者にとっては、異文化間の交流が個人の成長にどのように影響を与えるかを考えさせられると同時に、師弟を超えた関係に感動させられます。