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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】究極のマウントマネージメント!?『奴隷のしつけ方』

 

あなたは主人か、はたまた奴隷か。民主主義に葬られた奴隷制は、もしやマネージメント術と名を変えただけではないか。であれば人類史上長く君臨してきた奴隷制を、ある者は実社会に活かし、ある者は自らの身分を省みるのに役立つはずである。

舞台は奴隷制輝きし帝政ローマ。奴隷についてテーマごとに章立てされ、各章末に解説が付されている。まず、奴隷とはムチで打たれ死ぬまで酷使されるものだと思ったら大間違い。なにしろ奴隷一人あたり、ローマ人の年収かその半分程度と、それなりに値が張るのである。となると使い捨てにできるはずもなく、怠けないようにしつつモチベーションを持たせるといった長期的な管理が欠かせないことになる。

「奴隷の数だけ敵がいる」
どんな忠実な奴隷であっても、自由のチャンスを逃しはしないという古い格言だ。一見すると忠告のようにも見えるが、奴隷を使いこなした著者は幸運なことだという。いずれは自由になれるという夢を与えればよく働き、期待を裏切ればそれを棚上げにすればいいという。こういった賞罰のバランスをたくみに使いこなすことが主人には求められるのである。

本書全体を通して、かつてはこんな時代もあったのかと驚くことはない。むしろ現代においても、同じような使い使われる関係があることに気付かされるだろう。

最後に、初歩的な奴隷ルールを紹介したい。ローマ市民は元ローマ市民の奴隷を避ける。自由人として生まれた者を奴隷として使うのは「不快」だからである。例えば外国人実習生の問題は、奴隷を使いこなした古代ローマ人も食わぬ「不快なこと」が横行してはいないだろうか。

『奴隷のしつけ方』
作者:マルクス・シドニウス・ファルクス
発売日:2015年6月12日
メディア:太田出版