争いは、人間として避けられるものではない。そもそも人間は動物であり、本能も持っている。争いの1つの形は、お互いか相手に敵意を向けて、武力衝突が起きた形である。縄張り意識もあり、自分が正義だとそれぞれが怒っている。が、その争いに至るまでに要素がいくつもあり、複雑な過程になっていることが多い。この本では、そんな様々な争いについてのことが書かれているが、僕達が学校で習わない、裏の事情を抱えたものが多く紹介されている。その1つが、太平洋戦争である。これほど込み入った出来事は無いと思っている。本書で面白かった、太平洋戦争周辺の出来事を紹介していく。ちなみに、教科書よりも面白い。
僕が驚いたことの一つに、石原莞爾(いしわらかんじ)という人物がいる。この人物は、満州事変を引き起こす判断をした張本人であるが、この人と東條英機が対立した話が書かれている。この石原莞爾、「帝国陸軍の異端児」と呼ばれるほど、鋭い人物であったようである。詳しくは本書に譲るが、とても戦略的且つ大局的に物事を見ていたようだ。それがもとで、上司の東條と対立し、東條は実績の高い石原莞爾を罷免した、などとも書かれている。そんな石原は、「中国になんて、進むな」と言っていたと言う。こんなこと、教科書には書いていない。そのような込み入った点をしっかりと書いていてとても興味深かった。
また、昭和天皇を入れたある話し合いの時に、アメリカと戦った場合の勝算を計算してきた人がいた話も、中々に深い。その時、既にアメリカには勝てる可能性が低い、という結果が出ていたと言うが、東條だけが、実は意義を唱えていたらしいのだ。「勝てると思ってる根拠はどこにあるのだ」と迫る昭和天皇に対し、「陛下、お言葉ですが、実戦では何が起こるか分からないのであります」というような内容の言葉を発した、と書かれていた。もしこれが事実なら、これまた教科書は一切触れておらず、習ったものより遥かに複雑な出来事となる。
このように、本書では、争いに対して僕たちが知らないであろうことが、沢山書かれている。この本、実は駿台予備校の講師が書いたもので、どうやら世界史を、教えてるのだという。資料に基づいて書かれているらしいので、一応の信憑性はありそうだ。
このように、別の視点から争いを眺めてみるのも、面白いので、是非ともご一読をおすすめする。
参考文献
茂木誠(2019)『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』TAC出版
※この書評は、参考文献に基づいた僕の主観であり、真偽を保証するものでは無い。また僕は、戦争を擁護してる訳でもなく、反対の立場である。それを前提に読んで欲しい。
書評者:大隈知広