本書は、薪について多くの視点から解説した本である。舞台はノルウェーで、薪が盛んらしい。実は、ノルウェーは薪大国で、一種の産業にもなっているらしい。普段、薪のことなんて全然考えたことがなかったので、かなり新鮮な気持ちで読むことができた。薪に関する法律や実験など、多数の視点から書かれている。驚き多いこの本だが、特に驚いた点がある。
1つ目が、チェンソーと斧だ。チェンソーは、大きい音を出して、木を切る機械。田舎ではよく聞く音である。ノルウェーでは、薪を作るのに、まずチェンソーや斧を吟味するところから始まるらしい。実際本文には、車の車種を選ぶかのように、チェンソーや斧を用途によって選ぶ、みたいなことが書かれていた。これがまた新鮮。様々な会社がチェンソーを出しており、同じでは無いらしい。同様に、斧も、先端の形状が、種類や会社によって異なったり、切り方が違ったりしているとの事。初心者用の斧、なんてあるみたいだ。
また、法律で薪の燃やし方か決められているのが、斬新である。というのも、ノルウェーは、環境に厳しく配慮しているらしく、何と薪に関する大学の実験まであるようなのだ。これには驚きだ。具体的には、気に含まれる水分の量で、煙に含まれる有害物質の量や種類が変わるというのだ。そして、どのくらいの水分量なら燃やしていいのかを、法律で決めているのだと言う。極めて、薪に関する仕組みや制度が手厚い。恐らく、雪が降り、我々が想像する以上の寒さがあるのだろう。その中で先人たちは工夫したのかもしれない。
この本、他にも色々紹介されている。精神面でのメリットだったり、薪職人の紹介だったり、薪の積み方だったり。ここまであることには本当に意表をつかれた。いつか、行ってみたいものである。
自然が好きだったり、ログハウスに住んでる人には、参考になる内容だろう。
参考文献
ラーシュ・ミッティング(2019〜2020)『薪を焚く』浅田千恵(訳) 晶文社
書評者:大隈知広