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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】「知を愛する」とは何だろうか?『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』

この本は、哲学書なのであるが、固い本ではない。学問の基礎となり、今の僕らでも充分に活かせる内容として書かれている。本書に登場する「ソクラテス」という哲学者は、「無知の知」というのを体現している、非常に優れた人物だ。本書では、その美しさが滲み出ている。僕自身この本を読んで、非常に感銘を受け、楽しんで読むことが出来た。今回は、何故面白いのかを、書いていこう。

この本(特にエウテュプロン)でのソクラテスの言葉は、大雑把に3つの構成要素に分けることができるのだ。それは「問い」「大局的視点」「論理」である。例えば、「エウテュプロン」で、「敬虔(けいけん)とは何か」とエウテュプロンという登場人物に聞いた際には、ソクラテスは論点ずらしを質問によって指摘している。これは、この3つがないとできない事だ。何と言っても、これが紀元前の出来事であり、今の現代の科学の考え方に発展している。その元となった要素を、この本で体感できるのだ。その点で、どっぷり浸かることができる。

また、この本の面白い点として、「何を伝えたいのか簡単には掴めない」ことが挙げられる。通常、本では答えを探すために読んだり、トントン拍子で進む小説を読むだろう。しかし、この本によれば、ただ対話やソクラテスの一人語り(ソクラテスの弁明)が書かれてあるだけだ。つまり、自分でポイントを作り出す必要があるのだ。ポイントとしては、「知を愛する」を「問い」の形で表していることだろう。少なくとも僕はそう感じている。例えば、「エウテュプロン」と言う話では、「敬虔とは何か」を対話で迫っていく。が、その明確な答えは出てこないのだ。逆にそれが、知的刺激である。その点で見ると、より高速が求められる現代にはうってつけの書物だ。

哲学書の中でも比較的読みやすく、現実世界にも活かしやすい。何より、「知」について、深く入り込むことが出来る。物事を深堀したい人や、哲学的なことが好きな人にとっては、かなりおすすめの本であろう。

この本は、僕の思考法にかなり近い。また、ビジネスにも役立つかも知れない。そんな画期的な本なので、ぜひご一読頂きたい。

参考文献
プラトン(2017訳)『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』朴一功・西尾浩二(訳) 京都大学学術出版会
※本書は2017年に発売された訳書です

書評者:大隈知広