岡田斗司夫氏が、「オススメするSF小説と言うならこの三作」と掲げた内の一作。
なので、ものは試しと手にしてみた。
作者のカート・ヴォネガット・ジュニアのことは知らなかった。
本作は長篇二作目で、当時無名だったが、後年にはヴォネガット初期の代表作とも謳われることになった。
まぁ、ヴォネガットの小説自体、本作で初めて読むので、予想もクソもなく暗中模索しながらの読書となった訳だが、人を喰ったシニカルさと残酷さを強調しながらも、根底にはユーモアを携えた物語はなかなか読み応えがあった。
なんか変な目に遭って、時空を超えて、同時に永遠にあらゆる時と場所に存在し続けるウィンストン・ナイルズ・ラムファード。
その彼に見出された全米一の大富豪マラカイ・コンスタントの受難。それは、地球から火星、水星へと、更には木星最大の衛星タイタンへと移りゆくことだった。
その目的とは? また、物語全編を貫く宗教論は、読者に何をもたらすのか?
これだけだと、なんとも良く分からんストーリーであるが、SFらしい自由な発想。その自由な内容故に、1959年に出版されたというのが信じられない程、現代でも新鮮さを保っている。
その当時の人物がこんな自由な発想でユーモアを綴っていたとは! 私にとっては、それを知れただけでも本書を読了出来た価値はある。
なるほど爆笑問題の太田光さんが事務所にタイタンと名付けるほど感銘を受けたSFではあるね。
単時点的(パンクチュアル)な意味において。
タイタンの妖女
作者: カート・ヴォネガット・ジュニア
発売日:2009年2月25日
メディア:文庫本