自分はITエンジニアですが、やはりデザインには苦手意識があります。私のようにデザインに苦手意識を持っているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。
本書は、そういったビジネスパーソンに向けて、デザインとは何か、アートとの違いやセンスが無いからデザインは絶対無理という先入観や誤った認識を正し、ビジネスパーソンが避けがちなデザインと向き合う際に心掛けておくべきことをわかりやすく解説しています。
元々法学部進学を志望していた著者が、浪人生の際に改めて自身の今後の生き方について考える中で、ふと自分がアートやデザインが好きで、素敵なインテリアやアート作品にワクワクしていたことを思い出す。美大に絵を描く方法以外で入学できる方法を知り、学科と論文で美大に挑み合格した経験を持つ。当初は不安いっぱいで、自分は違いなのではないかと思っていたものの、入学後、課題に取り組む中で評価を受け、考え方がガラッと変わったという体験から、デザインに苦手意識を持つ人の気持ちに共感できるのだと語る。まずデザインに関する誤解を解くことから始まり、デザインとは何なのか、そしてデザイン力を磨く習慣について解説している。
一番よくある誤解は、アートとデザインを同じものとして捉えてしまっているということ。アートは個としての精神活動であるということ。生産的であったり、便利であったり、経済的であったり、合理的な価値が無くてもよい良いものである。一方で、デザインとは、人々の生活づくりを行うものであり、人間理解を前提とし、社会的な価値創造を目的としているため、生産的、便利、合理的価値がある必要があり、何かの課題に対して最適な解を目指す営みであるという。
また、デザインを表層的な意味合い(見た目だけ)で理解している方も多いと思いますが、人間は視覚から受ける情報が8割以上とかなりの割合を占めるため視覚はもちろん重要な要素であるのはもちろんですが、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など五感から伝わる情報全体を考えて設計される必要があるのだという。提供するモノやサービスそのものに限らず、利用者の体験全体を包括的に捉えて、ユーザー視点で考えることがデザインの重要な役目である。
最後の章では、ビジネスパーソンがデザイン力を磨くための新習慣がいくつか紹介されている。
これまで自分もデザインにはなんとなく苦手意識があったものの、少しでもデザインについて理解し、デザインに関わる仕事ができたら楽しそうだな(かっこいいな)と思っていたので、本書に書いてあることを少しでも実践しつつ、仕事にも活かしていきたいなと思いました。
昨今、経営やビジネスでも注目されているデザインについて学ぶきっかけになる一冊ではないかと思います。
ぜひお手に取ってみてください。
著者:稲葉 裕美
発行所:株式会社 翔泳社